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南谷かおり りんくう総合医療センター医師(上)外国人患者との橋渡しに

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 関西国際空港にほど近い「りんくう総合医療センター」(大阪府泉佐野市)には、英語など4か国語の医療通訳を配置する全国でも珍しい国際外来がある。ここに勤務する南谷(みなみたに)かおり医師(47)は、ブラジルでも医師免許を持ち、英語、ポルトガル語、スペイン語の3か国語を使いこなし、時には通訳も行う。外国人患者と日本の医療の橋渡し役になりたいという。

ペルー人の女性患者の頬に触れながら、「(できものが)きれいに取れてよかったね」とスペイン語で話しかける南谷かおり医師(りんくう総合医療センターで)=守屋由子撮影

 

通訳で受診手助け

 〈6月下旬。顔見知りのペルー人の女性患者がやってきた。頬のできものを形成外科で除去し、術後の診察を受けた後に立ち寄った。スペイン語で「まだ(できものが)二つあるから取りたい」という。頬を触りながら「取れたらいいね」と笑顔で答えた〉

 英語、ポルトガル語、スペイン語の患者さんに関しては、私が直接診たり、各専門科で受診する時の通訳をしたりします。ペルーの女性もそうですが、異国で言葉が通じる医療者がいるということに、ほっとした気持ちになってくれているのではないかと思っています。

 〈国際外来では、2006年度から無料で英語、スペイン語、ポルトガル語の通訳サービスを始めた。現在は中国語も加わり、通訳者は、研修中も含めて63人いる。他の医療機関にはないサービスが口コミで広がり、06年度は1年間で88件だった通訳件数は昨年度、731件にのぼった〉

 4年前、奈良在住のブラジル人夫妻の通訳をしました。妻は当時、17歳の妊婦で、通院していた自宅近くの産婦人科は、丁寧な対応だったけれど、言葉の細かいところがよく分からないということで、ご主人が運転する車で片道2時間かけて通院し、出産もしました。

 そのご主人が先日、脚の状態が悪いと、診察に訪れ、血管に血栓が見つかりました。「先生のおかげで無事に子どもが生まれた。自分もこの病院で診てもらいたいと思った」と言われ、国際外来の意義を改めて感じました。

日伯で医師免許

 〈ブラジルで医師免許を取ったのは、父親の仕事で11歳の時、同国のビトリア市に引っ越したのがきっかけ。ポルトガル語を学び、地元の国立大医学部に合格した。実践的な授業が印象に残る〉

 大学1年生の初日から解剖学の授業で人間の死体を見て、びっくりしました。5~6年生では各診療科の当直をしたり、病棟患者を受け持ったりし、薬の処方箋も書きました。

 〈ブラジルの医師免許を取得後、大阪大に留学。その後、ブラジルの病院で放射線科の研修医として2年働き、再び、阪大に戻った。31歳の時、日本の医師免許を取得した〉

 ブラジルの病院での経験が役立っていると思うことが、いくつかあります。その一つが、医療機器がない病院も多いブラジルで、問診や聴診、触診といった基本的な診察法をたたき込まれたことです。

検査中心の日本医療

 〈一方で、日本は医療機器による“検査偏重”であると感じる〉

 「日本の医者は患者の顔も見ない、触診もしない。それで診断ができるのか」という声を外国人の患者さんから聞きます。医療機器が普及した日本では、「とりあえず検査」という傾向が強まっています。検査で何も見つからないと、問題ない。痛いのなら痛み止めをということになります。

 〈日本に来る外国人の数は増加傾向にある。一方で、旅行者や日本語の不自由な在住者が、適切な医療を受けられる体制は整っていない〉

 日本の医師のなかには「外国人患者はレベルの高い医療を受けられて満足だろう」と思っている人もいるかもしれませんが、外国人は「日本の医療は大丈夫か」とコミュニケーション不足を疑問視しています。

 もっと患者の訴えに耳を傾け、治療方針がしっかり伝わるように説明する姿勢が必要です。(聞き手 新井清美)

 1965年生まれ、大阪府出身。87年にブラジルのエスピリト・サント連邦大医学部を卒業、翌年同国の医師免許を取得した。大阪大留学後、リオデジャネイロ市の公立病院に勤務。92年に帰国し、96年に日本の医師免許を取得。泉佐野市立泉佐野病院(現りんくう総合医療センター)、国立大阪病院(現国立病院機構大阪医療センター・大阪市)の放射線科などを経て、2006年からりんくう総合医療センターで国際外来を担当。健康管理センター長、女性外来担当も兼ねる。
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