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救急の現場から

からだコラム

[救急の現場から]病院は生活保障の場ではない

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 「全身がしびれて、路上で動けなくなったという48歳の男性のお願いなんですが」

 雨の降る夜半に、救急隊から要請が入った。

 「バイタルサインは?」

 「はあ、特に血圧等異常なく、発熱もありません」

 「四肢の動きは?」

 「明らかなまひは、ありません」

 何やら、つじつまの合わない症状なんだが。

 「で、全身がしびれてるって、いつから?」

 「はあ、ご本人がおっしゃるには3日ほど前からだと」

 ん? 待てよ、どっかで聞いたような話だな、そりゃ。

 「その人、何て名前?」

 「えーとですね……」

 受話器を耳に当てていた医者が、急に声を荒らげた。

 「悪いが、その男は、お断りだ!」

 「は?」

 「そいつは病人じゃない、詐病なんだよ」

 「さ、詐病?」

 早い話が、仮病というわけだ。同様の訴えで診断がつかず、大事をとって入院させたはいいが、雨の上がった翌朝、朝飯を平らげられた後で、金も取れずに逃げられてしまった過去がある。どうやら、近隣のいくつかの病院も被害にあっているらしい。

 暖かい寝床とおいしい食事にありつけたことで病気にならずにすんでいるのだとしたら、それはそれで結構な話じゃないかって?

 冗談じゃあない。人の良い救急隊や救急医につけ込みやがって、ここは急病人やけが人の治療を行う救急病院なんだ、決して、生活を保障する場ではない。

 それは、福祉こそが担うべき役割なのである。(救急医・浜辺祐一)

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