文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

今こそ考えよう 高齢者の終末期医療

yomiDr.記事アーカイブ

終末期医療は誰のもの?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 終末期の高齢者に対する家族の想いは様々です。そのため、高齢者が終末期に受ける医療は家族により異なります。しかし、医療を受けるのは、家族ではなく本人です。本人は人生の終末をどのように迎えたいのだろうかと、本人の立場で終末期に受ける医療を選択して欲しいと思います。

 
胃ろうから栄養を入れているところ

 ある76歳の女性患者さんはアルツハイマー病末期で、物を食べるとむせてしまい、肺炎を繰り返して入院していました。寝たきりで、言葉は発せず、家族の顔もわかりません。私がご主人に「もう食べることは無理ですが、胃ろうを作りますか」と聞くと、ご主人は迷うことなく「胃ろうは作りたくない。このまま食べさせていたい」と言いました。ご主人は、何年間も寝たきりの妻を自宅で介護し、入院後も毎朝、毎晩、自ら希望して食事を食べさせていました。結局、その患者さんは、肺炎で亡くなりました。

 また、88歳の男性患者さんは、脳梗塞を起こし数年前から入院していました。胃ろうで栄養補給を受けていましたが、寝たきりで、言葉は発せず、家族の顔もわかりません。気管切開もされており、痰の吸引や気管カニューレ(気管の穴に入れたチューブ)交換のたびに、体を震わせて苦しみます。しかし、患者さんの妻は「夫は私の生きがいなので、1日でも長く生かしてください」と言います。

 本人の意思確認が難しい場合、家族は経管栄養を行うべきかどうかで迷うことがあります。その時は、家族が本人に何を望むかではなく、本人が何を望むかを考えてください。大切なのは本人の満足です。(宮本礼子)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

201206終末期ブログ_サブナビ

宮本顕二、宮本礼子

宮本顕二(みやもと けんじ)
1976年、北海道大学医学部医学科卒業
北海道大学大学院保健科学研究院機能回復学分野教授

宮本礼子(みやもと れいこ)
1979年旭川医科大学卒業
桜台江仁会病院(札幌市)認知症総合支援センター長

ブログは2人が交代しながら書いていきます。

別コラムはこちら

宮本礼子・顕二「高齢者の終末期医療はよくなったのか」

今こそ考えよう 高齢者の終末期医療の一覧を見る

6件 のコメント

コメントを書く

それには医者の協力も必要

考える

>本人の意思確認が難しい場合、家族は経管栄養を行うべきかどうかで迷うことがあります。その時は、家族が本人に何を望むかではなく、本人が何を望むかを...

>本人の意思確認が難しい場合、家族は経管栄養を行うべきかどうかで迷うことがあります。その時は、家族が本人に何を望むかではなく、本人が何を望むかを考えてください。大切なのは本人の満足です。
と言われても医者からこうすることで助かる方法をあれこれ示された後、いいえ、いいです、このまま何もしないでください、と家族から言いだせるかは疑問です。
それだったら医者の方からも先に「助かる医療より穏やかな最期を迎えらえる方法」を示してくれないと。

つづきを読む

違反報告

死に方上手を目指せば・・・・

寺田次郎 関西医大73期

生きるでもなく死ぬでもなく、ときに気管内挿管や点滴その他のチューブをつけたまま・・・「これって生きてるの?」と思う命が沢山存在することは確かです...

生きるでもなく死ぬでもなく、ときに気管内挿管や点滴その他のチューブをつけたまま・・・「これって生きてるの?」と思う命が沢山存在することは確かです。

植物人間あるいはそれに類する患者だらけの病棟を揶揄して「植物園」と表現することがあります。
家族の思いだけならまだしも、財産や保険金、年金の兼ね合いもあるようです。

医療関係者もうっかり「自殺ほう助」とかにならない為に積極的に治療に励みます。
人間は結構強い生き物で、なかなか・・・・結構、家族もろとも泥沼になることもあります。

最終的には患者と家族が納得してその時を迎えられるのかだと思います。
そう考えれば、臓器提供よろしく、どの程度の治療を望むかの意思表示システムがあっても良いかもしれません。

「70歳を超えたら、死亡予定者講習」みたいな感じで。

今回のお話は慢性期がメインだとは思いますが、自分がどういう状態になるか分かってないから(想定の範囲外)、救急車に乗って、(意識のないうちに)治療をされてからビックリするわけでしょう。
実際、ICU症候群と呼ばれるせん妄(錯乱)もこれ(無知)が原因の一旦ではないかと考えています。

生き方上手も大事ですが、死に方上手も同じくらい大事だと思います。

つづきを読む

違反報告

生き方は多彩、本人の希望は

キヨシャン

難しい問題だと思います。元気な今こそ、その時点に成ったときのことを家族で話題にしておくべきではないでしょうか?子供は親孝行の一つもしていないのに...

難しい問題だと思います。元気な今こそ、その時点に成ったときのことを家族で話題にしておくべきではないでしょうか?
子供は親孝行の一つもしていないのにいざとなったら長生きしてほしいと胃ろうを含めてお願いすることも多いと思いますが果たして自分がその時にそれを要求すだろうか・・・本人はどう思うか? 元気なときに終末を相談しておきたいと思っています。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事