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[北原照久さん]エレキ「オレ、格好いい」

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「良い言葉を毎日インターネットに書くのが日課で、いいねっていう反響も、ついに1000を超した。誰かに元気をあげられたらと思ってやっていると、逆に元気をもらっているね」(横浜市中区で)=上甲鉄撮影

 ちょうつがいに少しサビの浮いた古めかしいケースを開けると、中には淡い水色のエレキギターがあった。「これはね、加山雄三さんも愛用している限定のギター。あの映画『エレキの若大将』の格好いい姿を思い出すでしょう」

 ピックを手に、ギターを構えて――テケテケテケテケ。弦の上で左の指を滑らせ、ピックを細かく動かす。疾走感のある演奏を披露してくれた。

 1960年代、エレキブームの頃、ちょうど高校生で加山さんにあこがれた。しかしエレキを手にしたのは、51歳になってから。司会を務めていたテレビ番組で、ミュージシャンに勧められたことがきっかけという。

 「最初はウクレレ。15分くらいあればコード(和音)の一つくらい覚えられるよって言われて教えてもらった。そしたら、本当にすぐできちゃった。そこから、楽器って楽しいなあって」

 その日から、「毎日、必ず」ギターを手に練習したら、弾けるようになった。DVDで一流ミュージシャンの弾く姿を見てまねをした。楽譜は今も全く読めないけれど、曲のレパートリーは徐々に増え、エレキギターのコレクションも少しずつ増えた。

 大学時代に留学したヨーロッパの街で、古いものを大切にする人たちに触れ、帰国後、古いおもちゃを集め始めた。多くの人に見てもらいたいと、20代後半から博物館を作ることを構想して、38歳のときに「ブリキのおもちゃ博物館」(横浜市中区)として実現させた。

 しかし手元には1000万円を超す借金。働きづめで、10年ほどは一日も休まなかった。「そのツケが回ってきたんだね」。50歳になる直前、声帯ポリープが見つかった。

 手術を控えて検査したところ、中性脂肪の数値も高いことが分かり、運動不足を指摘された。まずは腕立て伏せ、1日10回から。「初めは10回だけで手がブルブル震えて。昔は300回だってできたのにって驚いた」。しかし「毎日、必ず」続けるうち、回数は増え、1か月で100回できるようになった。

 「年を取ってからでも、毎日、必ず続ければできるようになります」

 56歳で始めたゴルフも、毎日の練習を欠かさず、1年ほどでスコアは100を切った。

 ギターを始めて2年ほどたった頃、加山さんの前で演奏する機会があった。「やれるじゃん、一緒に弾こうよって言ってもらえて」ついに加山さんと東京・銀座のクラブハウスで共演した。10代のころの夢がかなった。

 「加山さんにほめられたおかげで、その後も続けることができました。ほめてくれる人を探すのは、趣味を長続きさせるコツですね」

 今も、横浜市内で仲間たちと月1回のライブを続けている。今年5月にはついに70回を迎えた。曲と曲の合間には、「格好いいなあ、オレ」と自分をほめるのも忘れない。

 「あと30年、ライブをやる」。博物館の建設に、加山さんに会うことと、夢を実現させてきたこれまでを振り返ると、ひょっとしたらあり得るかも。ギターはその頃、ますます良い音を奏でそうだ。(内田淑子)

 きたはら・てるひさ コレクター、「ブリキのおもちゃ博物館」館長。1948年、東京生まれ。おもちゃのほか、ポスターやマッチ箱、企業のマスコットなども収集。テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」の鑑定士としても活躍している。

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