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楽ラク介護術

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(11)ボウリング 思わぬ効果

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 介護する方、される方の双方にとって、「遊び」や「息抜き」は大事です。その方が、頑張ってリハビリするより効果があることも多いんですよ。

 現役時代はバス運転手だった俊二さん(75歳、仮名)が私のいた施設に入所してきました。もともと音楽やスポーツが得意で活動的でしたが、脳こうそくで左半身まひと失語症が残りました。しょっちゅう転んで青あざが絶えず、スタッフはハラハラし通しでした。

 常に目が離せないとスタッフが言うので、ある日、私は俊二さんをボウリングに連れ出しました。初めは座って見ていた俊二さん、熱心にボールを目で追い、ピンの倒れ方に一喜一憂。そのうち、声を上げて腕を動かすので、「やってみる?」と、ボールを手渡しました。俊二さんは慎重に立ち上がると、重いボールを構え、右足を一歩、左足を半歩踏み出しました。どすんとボールが足元に落ちてガターレーンに吸い込まれるのを見て、悔しがりつつ、ニコッと笑います。

 初めは転ばないように私が支えていましたが、何度もチャレンジするうち、一人で上手にバランスを取って投げられるように。ピンを倒そうと意気込む顔、倒せなくて残念がる顔。いつもの歩行訓練では見られない生き生きした表情です。

 それから定期的にボウリングに通い、俊二さんは何とか一人で歩けるまでになりました。ボウリングは歩行訓練にもってこいだし、腕の力もつきます。付き添いの職員も楽しめます。

 ほかのお年寄りからも「連れて行って」と声が上がり、仲間がどんどん増えました。迷惑をかけると遠慮する人もいましたが、行ってみたら大喜び。やりたいことを引き出すことこそ介護の醍醐(だいご)味です。(青山幸広、介護アドバイザー)

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