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[障害者とヨガ]緊張解き意欲引き出す

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社会参加、仲間作りに

タオルなどを使って介助しながら、できるポーズを楽しんでもらう(今年5月、神戸市で開かれたイベントで)=藤村のぞみさん撮影

 心身に障害や病気を抱える人とその家族らにヨガを楽しんでもらおうという試みがある。深い呼吸を伴うゆっくりした動きから開放感や爽快感が味わえ、前向きな意欲を引き出すきっかけになるなど精神面の効果が期待されているという。(高梨ゆき子)

 「ここでは安心して自分を放り出して。背負っている荷物を、背中からおろしましょう。いつも十分頑張っているから、今は頑張らなくていい」

 ヨガ指導員の峯岸道子さん(58)は、障害者やその家族に静かに語りかけた。今年5月、神戸市で開かれたハンディキャップ・ヨガのイベント。ゆっくりと深い呼吸を繰り返しながら、手を伸ばしたり、体をひねったり、筋肉を緊張させては緩める様々なポーズを指導した。

 発達障害のある同市須磨区の米田奈津子さん(25)はボランティア指導員に手助けされて挑戦。「楽しかったです」と顔を上気させて話した。母の敬子さん(59)は「娘と向き合う日々に行き詰まりを感じていたので、頑張らなくていいという言葉が心にしみた。ヨガは初めてですが、ずっと胸に押し込んでいた感情がふわっと解放されたような心地でした。これからも頑張らないと」と涙ぐんだ。

 峯岸さんも、筋肉がまひしていく難病・筋ジストロフィーの長男を長年介助した。長男を亡くしてからヨガに出合い、緊張を解いて心を安らかにしてくれるヨガの魅力にのめり込んだ。「もっと早く知っていたら、もう少し余裕をもって息子の障害と向き合えたのに」。ヨガ指導員となり、横浜市で教室を開く傍ら、2009年には障害者やその家族とヨガサークルを設立。指導員の育成も含め、徐々に仲間の輪を広げている。

 障害があるとヨガのポーズは難しそうだが、峯岸さんは「障害に合わせて、無理せずできることをすればいい」と話す。体が不自由な人にはタオルやクッションを使い、指導員がマンツーマンで支援する。

 障害者のスポーツ指導に詳しい横浜市リハビリテーション事業団指導員の宮地秀行さん(45)は「家にこもりがちな障害者や家族にも、ヨガのゆっくりした動きは受け入れられやすいと思う。社会参加や仲間作りの機会にもなり、前向きな意欲を引き出すきっかけになるのでは」と、こうした活動に期待を寄せる。

 病院内で、医師が患者にヨガを指導している例もある。東京厚生年金病院(東京都新宿区)では週1回、「院内ヨガ」が開かれる。

 担当する耳鼻咽喉科部長の石井正則さんは、事故のため一時は両手がまひし、医師の仕事を続けることも危ぶまれたが、たまたま教わったヨガで初めて手が動いたことをきっかけに、注目するようになった。リハビリで手の機能が回復した後、ヨガを本格的に学び、今では別の病院でも、心療内科の患者に指導している。

 石井さんは「特にうつの患者さんは、半年~1年続けると徐々に自律神経の症状が改善したという人が多い。ヨガの深い呼吸は気分を晴れやかにし、自律神経系を安定させるのではないか」と話している。

ヨガ
 古代インドで発祥したとされる修行法で、様々なポーズや呼吸法、瞑想(めいそう)を通じ、心と体の調和や安定を目指す。今では健康や美容に広く採り入れられている。
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