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認知症 明日へ

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[どんな症状?]早期診断、妻が説得

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適切な治療、生活にゆとり

 認知症とは、どんな症状で、どのように気づき、診断されるのか。東京都江東区の田渕保夫さん(65)の場合、電車に乗り間違えたり忘れ物が増えたりして、妻の節子さん(66)が「何か変だ」と感じたのがきっかけで、アルツハイマー型認知症の早期診断につながった。(本田麻由美、小山孝)

田渕さん夫婦の自宅には、海外で暮らす息子夫婦を撮影した写真がたくさん飾られている。「いつまでも家族の思い出を持っていてもらいたい」という節子さんの願いが込められている

 「初めは男の更年期かなと思っていたんです」

 節子さんは、保夫さんの異変に気づいた8年前のことを、そう振り返る。

 米大手銀行に勤めていた保夫さんは、40歳の時に東京支店からサンフランシスコ本店に転勤となり、その後、家族で米国に移住。57歳で早期退職し、「第2の人生」は翻訳や趣味のタンゴを楽しもうと、2004年、夫婦でアルゼンチンに移り住んだ。

 しかし、間もなくすると、一緒に暮らしている節子さんには「おや?」と思えるような異変が現れた。「Air Mail(エア・メール)」というつづりを忘れたり、帰り道を間違えたり――。節子さんは不審に思いつつ、自身が現地になじめずうつ症状に苦しんでいたこともあって、翌年、夫婦で帰国。「僕はちっともおかしくなんかない。おかしいのは節ちゃんの方だ」と言う保夫さんを、「私も診てもらうから」と説得し、大学病院に連れて行った。記憶力や理解力を調べる検査や脳の画像検査をしたところ、その時は軽度認知障害と診断された。

2人の息子夫婦とともに、結婚35周年を祝った(2008年、米国サンディエゴの海岸で)

 その後、保夫さんは知人の紹介で、外資系銀行に勤めた。だが、自宅に財布や眼鏡を忘れたり、お金が数えられず、買い物ではいつも千円札で支払ったりしていたため、三井記念病院(東京)を受診。脳の萎縮などが見られたため、06年、「初期のアルツハイマー型認知症」と診断された。

 認知症は、病気などが原因で、脳の細胞が死んだり働きが悪くなったりして、記憶障害などが起こり、生活に支障が出ている状態をいう。原因となる病気は70種類ほどあるとされる。代表的なものとしては、「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」などがある。

 保夫さんの主治医となった同病院精神科部長の中嶋義文医師は、田渕さん夫婦のように、おかしいと思ったら早めに受診することが重要だと強調する。理由として、〈1〉中には早めの対応で治るタイプもある〈2〉生活に支障が出る認知症は、医療だけでなく介護の役割も大きく、適切なケアに早く結び付けられる〈3〉判断能力があるうちに自分の状態を知ることで、心構えや今後の人生の準備などができる〈4〉家族も心の準備ができる――などを挙げる。

若年性認知症の人と家族らの全国交流会に参加し、懇意にしているケアマネジャーらと余興を披露した保夫さん(左から2人目)(今年5月、富山県朝日町で)

 診断を受けた保夫さんは、1年半後に銀行を定年退職した。節子さんは「できるだけ社会と接点を持っていた方がいい」と考え、自宅近くにある高齢者施設のボランティアができないかと中嶋医師に相談。保夫さんは2年ほど高齢者の話し相手を務めた。

 「必要な時に手助けを求めることは恥ずかしいことではない」と、節子さんは自宅のマンションの管理人にも認知症のことを知らせ、家族会にも積極的に参加して勉強した。

 現在、保夫さんは、週6日、デイサービスを利用している。言葉が出てこなくなるなど、症状の進行も見られる。家族会のほか、ケアマネジャー夫婦とも交流するなど、様々な支援を受けて暮らしている。

 「本人は認めたくない気持ちが強かったと思う」。保夫さんが診断を受けた当初の気持ちを節子さんはこう見ている。

 「でも、早期に診断を受けたことで、軽度のうちから治療を受け、介護サービスを使うことができた。多くの人と出会い、助けられて、今の穏やかな生活があるのだと思います」

軽度認知障害
 自分でも分かる軽い記憶障害や理解力の低下などがあるが、日常生活に支障をきたす「認知症」と診断されるほどではない状態。その後、アルツハイマー型認知症に進行する人がいる一方で、進行しない人もいる。記憶障害があっても、加齢に伴うものや、頭部外傷によるものなど、認知症以外が原因のケースもある。
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