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対談(1)治癒でなく、病気とともに生きる

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 基調講演に続いて、大内さんと、南砂(みなみ・まさご)・読売新聞東京本社医療情報部長の対談が行われ、高齢者の健康づくりなどをテーマに話し合いました。

大内尉義(おおうち・やすよし)・東京大学医学部付属病院老年病科教授
南砂(みなみ・まさご)・読売新聞東京本社医療情報部長

  皆様、こんにちは。きょうのテーマである「高齢者の健康」について掘り下げていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 大内さん、そもそも若者と高齢者とで、健康の意味はどのように違うのでしょうか。

 大内 高齢者の健康を考えるときに若い方と一番違うのは、若者は病気になりにくいですし、なったとしてもせいぜい一つか二つぐらいで、そういった病気を基本的には治していくわけです。治癒を目指すわけです。ところが、高齢者、特に75歳以上の後期高齢者になりますと、いろんな慢性的な疾患を持っていますので、治癒ではなくて、むしろ病気とともに生きるという状態を目指していくわけです。基本的に、日常生活に差しさわりがなければそれはそれでよしとする。それ以上、治癒を目指した治療をすると、かえって逆効果なことが多いんですね。こういう考え方の違いが一番重要な点だと思います。

  一定の年齢になったらあまり完璧に治そうと躍起になるのではなくて、もともとの健康を維持できるように病気とうまく共存していくという考え方でしょうか。

 大内 そうです。いわゆる日常の生活機能に着目した医療ということです。食事が食べられて、おふろに入れて、着替えができる。さらに、買い物ができて、外に行って活動ができる。患者さんのこうした生活機能に注目し、それらの活動が妨げられず、維持できるように、病気とうまく折り合いを付けるという考え方です。こうした発想の転換が必要だと思います。

  高齢者の病気を診る専門医には、どうしたら出会えるのですか。

 大内 日本老年医学会が老年病専門医を認定していて、現在、全国に約1500人います。日本老年医学会のホームページにアクセスすると、老年病専門医の名前と勤務先が出ていますので、参考にしてください。

運動強度の目安「脈拍=138-年齢の半分」…ちょっときついぐらいが適度

  日常の生活機能を保てるよう、高齢者がどうやって健康づくりをしたらいいかということを、伺っていきたいと思います。まず、運動ですが、高齢者にはどの程度の強度の運動が適しているのでしょうか。

 大内 「脈拍=138-年齢の半分」、これが健康に適した運動強度の目安です。例えば60歳ですと、138-30=108ですから、脈拍が110ぐらいということです。ちょっときついかなというぐらいの運動が、これに相当します。うんと楽だなではなくて、ちょっときついかなというぐらいです。この強度の運動を日に30分であれば、週に6日、日に1時間であれば1日おきというのが、標準です。

 最近は、いろんなスポーツ医学の研究で、30分とか1時間、続けて運動しなくても、細切れの運動でも効果があるということが実証されていますので、朝・昼・晩に分けて10分ずつを3回でも構いません。合計して1日30分であればほぼ毎日、1日60分であれば1日置きというのが標準的ですね。

 ただ、膝が悪くて、そんなに運動できませんという方も多分たくさんおられます。散歩程度の運動でも、それなりに効果があると言われています。そういった方も家の中ばかりで生活するのではなく、散歩程度の運動でも効果があるので、家族が誘って外に連れ出してはいかがでしょうか。(続く)

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