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楽ラク介護術

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(9)意欲支える「魔法の軍手」

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 寝たきりの人の中には、本当に体が動かないのではなく、動く意欲を持てないだけ、という方が大勢います。こうした方は、ふとしたきっかけで、どんどん動けるようになります。

 東京でキャリアウーマンだったミヤコさん(80歳代、仮名)は、田舎に住む息子と同居を始めましたが、寝たきりになって施設に入所しました。ご家族は職員への遠慮もあってミヤコさんの外出を望まず、活動的だったミヤコさんは意気消沈。ベッドから離れなくなり、筋力も弱って、全面的に介助に頼る状態に。

 「とにかく外に行きたい。ドライブして、コーヒーを飲んで、マグロを食べたい」。施設のアドバイザーだった私が訪問するたびに訴えるので、こっそり街に連れ出すことにしました。

 車の中からウキウキしていたミヤコさん。すし屋に入ると、しゃきっと座り、腕まくりして好物のマグロをほおばり始めました。普段のスローな動きとは全然違います。次に訪問したときは、コーヒーを飲みに山の中の喫茶店へ。それまでは東京の思い出話ばかりだったのに、「もっと元気に動けるようになりたい」と本音を打ち明けてくれ、ベッドから起き上がるコツや、車いすへの移動法、車いすの操作法などを熱心に質問してきます。自分の思いを受け止めてくれる人が現れたと感じて、前向きな気持ちになったのでしょう。

 施設に戻り、心の支えにしてもらえればと、私は持っていた軍手に自分の名前を書いて渡しました。「世界でたった一つの、魔法の手袋だよ~」。ミヤコさんは軍手をはめた手で、いつもより強く握り返してくれました。そして、一気に自分で起き上がると、車いすに移り、懸命にタイヤを回し始めたのです。(青山幸広、介護アドバイザー)

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