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基調講演(1)高齢者の病気診る専門医とは…東京大学教授・大内尉義さん

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 高齢者の健康をテーマにした「医療ルネサンス町田フォーラム」(読売新聞社主催、東京都町田市、同市医師会後援)が4月12日、東京都町田市の町田市民ホールで開かれ、約500人が参加しました。東京大学医学部付属病院老年病科教授の大内尉義さんが「動脈硬化、認知症、骨粗鬆症――高齢者の健康を脅かす三つの病気との上手な付き合い方」と題して基調講演。この後、高齢者の健康づくりなどをテーマに、南砂(みなみ・まさご)・読売新聞東京本社医療情報部長と対談しました。

 フォーラムの詳しい内容をご紹介します。最初に、大内さんの基調講演です。

東京大学医学部付属病院老年病科教授・大内尉義(おおうち・やすよし)
 1949年岡山県生まれ。73年東大医学部卒。76年同第3内科入局。米テネシー大医学部留学、東大老年病学教室講師などを経て、95年から現職。2006年から、東大医学部付属病院副院長を兼任。
 専門は、老年医学、循環器病学(特に高血圧、動脈硬化)、骨粗鬆症、認知症。日本老年医学会理事長、日本老年学会理事長、日本動脈硬化学会理事、日本認知症学会理事などを務める。
 著書に、「新老年学」「病気予防百科」(いずれも共著)など。


お年寄りの心身の健康、総合的に診断…老年病専門医が司令塔

 大内 本日は、お年寄りの健康をどうやって守っていくか、お年寄りの健康をどういった病気が脅かしていくか、あるいは、食事とか、運動とか、生活習慣はどういうふうに気をつけたらいいか、そういったことを中心にお話をしたいと思います。

 私は東大病院の老年病科という科に所属しています。老年病科というのは、病院によって呼び名は異なりますが、基本的には内科で、お年寄りの心身の健康を総合的に診ていこうという診療科です。

 85歳の女性の患者さんが、私どものところに来られ、「歩きづらい、膝から下がしびれる」とおっしゃいました。受診の理由は、「今までいろんなお医者さんにかかったけれども、満足のいく診療をしてくれない。お年寄りの専門医に相談したい」ということでした。

 この方が、歩けない、膝から下がしびれることの原因を内科的に詰めますと、まず、糖尿病性の神経症で末梢神経の障害がある。骨粗鬆症があって腰痛がある。それから、閉塞性動脈硬化症のため、足の動脈の血液の流れが悪くなって、歩くと足が痛くなる。それから、脊柱管狭窄症という脊柱が狭くなる病気があって、これも足が痛くなる原因です。

 この方は、糖尿病内科、整形外科、血管外科と循環器内科、それから、うつ状態もあるので、精神科、そのほかに、白内障と糖尿病性の網膜症があって、眼科にかかっています。これだけでも六つの科にかかっているわけですね。もちろん専門的な治療はそれぞれ必要なわけですが、六つもの診療科にかかると、いったい、薬はどのくらいになるのでしょう。 

 別の患者さんですが、私どものところに入院されたときに、50種類のお薬を持ってこられた方がいました。もちろん、必要不可欠なお薬はあるでしょうが、30種類、50種類のお薬がほんとうに必要なのかということもちゃんと考えなくてはいけません。分業体制で診ていると、そういうことを考えてくれる人がだれもいないんですね。もちろん自分のところの診療科でできる限りの医療をするわけですけれども、そういった交通整理をしてくれる人がだれもいない。治療が必要なのかどうかということも、判断してくれる人がいないわけです。

治療、生活の質向上、介護の活用…幅広い視点が必要

 それでは、高齢者の病気を診る専門医というのは何をするのでしょう。まず、お年寄りは複数の病気を持っているだけでなくて、食事や着替え、排泄や入浴などの日常生活を営むための機能(日常生活動作=ADL)も低下しています。これが、お年寄りの生活の質(QOL)も低下させています。ですから、お年寄りの医療では、特定の臓器だけを診て、病気を治すという診療だけでは不十分で、ADLやQOLをどのようにして高めるかということも考えなくてはなりません。

 身体機能だけでなく、心の状態への配慮も必要ですし、さらに、介護保険を活用して、どういった介護をしたら、その方のADL、QOLがよくなるのか。こういった非常に幅広い視点が必要になります。どういう順番で、どういう治療をするのかも含め、こうしたことを考える司令塔的な役割を果たす医療、それが老年病専門医の役割なのです。(続く)

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