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[どうなる食品表示](4)知りたい消費者 戸惑う事業者

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原料原産地・栄養成分 義務表示拡大に賛否

菓子の原材料名に、条件を変えながら原産地名を加えた表示例。世界各国の原材料を組み合わせて加工食品は作られる(全日本菓子協会の資料より)

 消費者庁の表示一元化検討会の論点に、「原料原産地表示の拡大」と「栄養成分表示の義務化」がある。食品の詳しい情報を知りたい消費者がいる一方で、事業者を中心に負担増を懸念する声も根強い。

 砂糖や水あめなど15の原材料を使う菓子の原料原産地を表示するとどうなるか。全日本菓子協会が試した表示がある。砂糖の原材料のサトウキビの産地を遡ると「砂糖(タイ、日本)」、国産かどうかを示すだけなら「砂糖(外国、日本)」、季節で調達先が変わる可能性があれば「砂糖(タイまたは南アフリカまたは……)」とずらりと国名が並ぶ。条件次第で表示のスペースは大きく変わる。

 同協会は「菓子は砂糖や水あめなどの中間加工品で作る。産地が違う原料でも同じ品質を保つ技術があり、表示が必要なのだろうか」と訴える。

 主婦連合会(東京)が今年1月末、100人を対象に行った加工食品の原料原産地表示についての調査では、7割が「すべての加工食品の原料原産地を知りたい」と回答。表示項目は「使用原材料すべて」「原材料の多い順3~5品目」がそれぞれ4割を占め、関心の高さがうかがえた。

 現在は緑茶など原産地の違いが品質に影響するとされる22の加工食品群と4品目の主な原材料にのみ原産地表示が必要だ。しかし、同庁の検討会は「品質の差」だけでなく、「原料の産地と、製品の最終加工地を誤解しやすいか」との観点からも対象を広げることを検討している。

 また、栄養成分表示は「塩分控えめ」など栄養に関する表示をする場合には、熱量(カロリー)、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムの5項目の表示が義務だ。しかし栄養成分を強調しない場合には、任意表示。

 消費者庁が昨年度、食品関連事業者173社(大企業25社、中小企業148社)に行った調査では、義務化を広げると「原料の変更をするたびに栄養分析の費用がかかる」など否定的な意見が並んだ。一方、海外の事情は異なり、アメリカ、中国などではすでに取り入れている。

 自社の加工場でパンやジャムなどを製造している埼玉県の「道の駅・果樹公園あしがくぼ」は、商品の一括表示欄のラベルを自前で作っている。販売担当の村越利正さんは、「義務項目が増えれば機械の買い替えも必要だし、ラベルは文字だらけになるかもしれない。法令には従いたいが、どこまで対応できるか不安」と口にする。

 海外の動向に詳しい名古屋文理大教授の清水俊雄さんは「過剰摂取が問題となる栄養成分の含有量など、安全にかかわる表示は国際的に義務化の方向だ。食の安全への消費者意識の高まりで、原産地の情報開示も検討する流れが欧米にある」と話す。ただ、国ごとに事情が違い「表示をするメリット、デメリットを検証した論議が必要」という。

 同庁は来年の国会に新制度の法案を提出する方針で、検討会は来月にも義務表示をどこまで広げるかを含めた方向性を示す報告書をまとめる予定だ。

 加工食品無しでは、現代の食卓は成り立たない。食べる側と作る側の意識の溝をどう埋めるかという課題を抱え、食品表示を管轄する消費者庁の真価が問われている。(大森亜紀、上原三和)(おわり)

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