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[中高生の部] 最優秀賞 「私は、なりたい」

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高橋 静 さん
神奈川県横浜市
16歳 ・ 高校1年

 看護師になりたい。そう思ったきっかけは看護師をしている伯母の働いている姿を小さい頃に見た時、その姿に憧れたからだった。その憧れを夢に、目標に変えたのは私が小学三年生の頃から通っている家から徒歩四十分の大学病院のある一人の看護師だった。

 私は小学三年生の時、てんかんという脳の病気を発症した。幼かった私はあまりよく病気を理解していなく、薬も親の言うとおりに用量を守って飲み続けていた。この頃は特に何も感じていなかった。

 年を重ね、色々な経験をつみ、大人になっていくにつれてやっと自分の病気の事が分かったのが中学二年生になったばかりの時だった。欠神(けっしん)発作のてんかん、慢性疾患であり一生治らない事、薬を飲み続けないと倒れてしまう事などを知って、かなりショックを受けた。心の中で病気を軽くみていた所もあり、自分と周りの人は一緒だ、私は普通の人間だ、と思っていたからだ。だけど本当は違っていた。私は普通なんかじゃないんだ。

 一度そう思ってしまったらもう止められなくなった。何度も何度も頭の中で同じ事を考え続けた。そして泣き叫んだ。なぜ私だけがこんなにも違うんだ、と。誰にも相談できず自分の中でため込み考え続けた結果、私は壊れてしまった。

 自分で言うのもなんだが昔は割と真面目だった。小学校の時も成績はよかったし、塾もちゃんと通っていた。中学校に入ってからもちゃんとしていて薬も毎日飲んでいた。しかしその壊れてしまった自分は今までとは全く違う自分になってしまったのだ。家に居たら物に当たり、壁を蹴って大きな穴を開けたり、部屋にある物を全部ぐちゃぐちゃにしたりするのは日常茶飯事だった。学校では、違いを感じたくなかったからなるべく人と関わらないようにしていた。そのせいかあまり中学二年生の時はいい思い出がないのだ。そして薬を全く飲まなくなった。親には飲むのがめんどくさくなった、と言ったが本当の理由は違った。私は薬なんか飲まなくても大丈夫なんだ、私は普通なんだ、と思いたかったからだった。

 しかし、私の体は私の思い通りにはならなかった。中学二年生の秋、晩ご飯を食べてる途中に私は倒れた。

 起きたのは病院のベッドの上だった。そしたら近くにいた一人の看護師さんが近付いてきてこう言った。なんで薬飲まないの?と。とてもいらいらした。どうせ言ったって学校の先生とか親みたいにちゃんと飲みなさいって言うだけだろう?と思って無言でいたら、私もねてんかん患者なのとその人は言った。私はびっくりした。今までてんかん患者、自分と同じ人を見た事がなかったし、治す側の人にもそうゆう人がいるんだ、と思った。だからあなたの気持ちよく分かるよ、とその人が言ってくれた瞬間涙が出た。初めてだった、そうゆう風に言ってくれた人は。気付いたら私は今まで感じてた悩みなどをその人に話していた。その人は静かに私の目を見て、私の話を聞いてくれたからだんだん心がかるくなっていった。私が話を終えたらその人は言った。気持ちはものすごく分かる。だからこそ言うけど薬はちゃんと飲んでいかなきゃあなたが困るの、そして受け入れて、まっすぐ病気と向き合う事ができないのならあなたはやりたい事も、今している事もできなくなる、全部失うの。嫌でしょう?ならしっかり前向いて生きていくんだよ、と。心をつらぬかれた気がした。私は今まで自分の病気と向き合った事がなくただ、ただ逃げていただけだったんだ、一生つきあっていく事なんだからいつまでも逃げていたら駄目なんだ、とその人は私に気付かせてくれた。

 あれからもう三年の月日が経(た)った今はしっかり毎日薬を飲んでいます。薬の副作用にも慣れてきて普通の高校一年生として生きています。

 私の将来の夢は看護師です。あの人みたいな身体だけでなく心の治療もできるような、そんな看護師に、私はなりたい。

第30回「心に残る医療」体験記コンクールには、全国から医療や介護にまつわる体験や思い出をつづった作文が寄せられました。入賞・入選した19作品を紹介します。

主催 : 日本医師会、読売新聞社
後援 : 厚生労働省
協賛 : アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)
※ 年齢や学年は表彰式(2012年1月21日)当時のものです。
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