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(7)「その人らしさ」に寄り添う

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 入院中に足腰の衰えた洋子さん(70歳代)(仮名)が、退院後のリハビリのため老人保健施設に入所してきました。若いときからおしゃれで、毎日化粧を欠かさず、ワンピースを着ていることの多い上品な女性です。ピンクの花柄のつえがお似合いで、車いすも赤いチェックの愛らしい柄。洋子さんの趣味をよく知っている息子さんの見立てです。

 ある日、洋子さんが何となく沈んでいるので、「体調でも悪いの?」と声をかけると、逆に「青山さんなら、私にどんな靴を選ぶ?」と聞いてきます。私は、ベッドに座った洋子さんの隣に腰掛けて答えました。「洋子さんには、おしゃれでかわいい靴が似合うから、一緒にデパートに行って、ヒールの高い靴や花柄の靴を店員さんにいっぱい持って来てもらう。それで、一つずつ洋子さんに履いてもらって選びたいね」

 すると洋子さん、「そうでしょ」と大きくうなずき、いつになく興奮気味に話し始めました。「歩行訓練用にリハビリシューズがあるといいと言われて、カタログを見せられたの。布の接着テープで止める靴で、色はベージュと茶色の2種類だけ。仕方なくベージュを頼んだら、早速持ってきてくれたのが、これなのよ」

 ベッドの下に置かれた靴は、確かに洋子さんの趣味とはかけ離れています。自分を否定されたように感じたのでしょう。「リハビリなんて、したくない」と、不満げです。

 「じゃあ、デパートに行ってヒール7センチの靴を買って来よう。それを履いて洋服を買いに行けるように、リハビリしよう」。そう提案すると、洋子さんの顔がぱっと輝きました。

 その人らしさを大切にする。一緒に夢に向かって進む。それは、多くの場合、機能性より重要です。(青山幸広、介護アドバイザー)

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