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日野原重明の100歳からの人生

介護・シニア

開業医がよい家庭医となるには

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 日本には、現在、診療所医師は全国医師数の約3分の1の約10万人あり、その大部は日本医師会の会員として登録されている。

 世界で英国、ドイツ、スウェーデンならびに日本は国が関与する国民保険制度があるが、アメリカ合衆国は国民各位による自由診療が行われている。

 医療が国営となり、政府(National Health Service: NHS)が医療システムを完全にコントロールしているのは、英国であり、外国からの旅行者でも、英国内で発病すると、歯科や眼科の視力調整以外は無料で医療が受けられる。

英国では家庭医が住民の健康管理

 英国では、地区の人口2500人を単位として1人の家庭医が住民の健康を管理し、発病した患者は、その医師にいつでも無料で受診できる。その医師が自分で治療できると思えば、その主治医となって、必要な薬を処方し、何かの処置を行うが、その開業医は自分では診断困難で自信を持って治療できないと思うと、地域の病院の専門医に送り、診断治療を預ける。家庭医はいわばゲートキーパーとなって、患者のために最も望ましい医療の管理を行うのである。この制度の原案は英国のベテラン開業医のDr. John Fryの考えを参考にしたもので、私は、彼の著書『プライマリ・ケアとは』を日本語訳で医学書院から1981年に出版した。

 日本には、1927年に健康保険法が施行されたが、日本の開業医は、英国の家庭医のように有資格の医師が指定されているのではなく、医師であれば誰でも一般診療でも、小児科や内科医としてでも、または専門家医として(循環器専門医や消化器専門医、また精神科医)として開業できるのである。日本では患者はどの開業医の診療でも保険で受けられ、またはいきなり大きな総合病院でも、大学病院でも、国公立のがんセンターでも保険証を持って行けば受診できる。

 しかし、これでは医療費を無駄に使うことになり、日本の今日の医療費は40兆円に迫ろうとしている。

プライマリ・ケア医学、日本でも卒後研修で修得を

 このような医療の無駄を防ぐには、開業医がプライマリ・ケア医学を卒後の医師研修中に修得する必要がある。

 そこで日本ではこのようなプライマリ・ケア医学を一定の研修病院で訓練されるように、プライマリ・ケア学会とか、総合診療医学会、その他の学会がそれぞれの卒後研修システムを発表してきた。それがやっと一つに合一される動きが出て、各学会が調節し、できれば総合臨床医とかその他の称号で統一しようと努力している。しかし、まだその諸学会の合議による名称の一致が見られないというのが現状である。

 英国や米国でいうプライマリ・ケア医とは、登録した医師に昼夜区別なくいつでも接触でき、よくある病気(common disease)の診断や治療法が受けられて、患者の家族にもよく説明し、いつでも往診でき、治らない慢性病でもきめられた処置ができ、登録された医師一人だけでなく、訪問看護師やリハビリテーション技師、栄養士とも協力して働ける医師を登録医というのである。

 患者にはなるべく時間をかけ、忙しい病院の外来での3分診療でなく、医師は丁寧に患者を診察し、最初からいくつもの検査を行わず、十分に会話のできる医師がプライマリ・ケア医、または総合診療医と呼ばれる医師である。

 日本医師会は、会員の開業医にこの資格を取らせるように勧めることに対しては、会員の間に納得しない医師もあり、日本医師会としての決断が困難な状況にある。

 日本では、開業している医師は自分の子どもを医学部に入学させ、いずれは自分の開業の後を継いでほしいと願う医師が多い。しかしその医師の子どもはたとえ医学部に入学しても卒後に専門課程を志向するものが多く、大学のどこかの講座制の中で教職の地位を望むが、それはなかなかかなえられず、それが数年以上続くと、結局は親の開業医院の後を継ぐことになるのである。しかし、総合臨床の訓練を本当に受けないで開業の仕事をすることとなると、これには受診者にはよくない医療が提供されることになる。

 そこで厚生労働省と日本医師会と学識経験者が会議して、患者中心の保険診療が行われる日が早く来ることを私は強く望んでやまない。

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日野原重明ブログ_顔120_120

日野原重明(ひのはら・しげあき)

誕生日:
1911年10月4日
聖路加国際病院名誉院長
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