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変わる戒名

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 仏教の戒名を付けてもらうことについて、考え方が変わりつつある。日本では葬儀の際に授かる名前として広く浸透しているが、生前に付けたり、使いたい文字を伝えたりする人が増えているという。一方、「戒名は要らず、俗名のままでいい」という人もいるようだ。(赤池泰斗)

文字は自分好みで…「生前に」「俗名のまま」要望も

存命中の人の位牌も亡くなった人の位牌も一緒に並ぶ「常在寺」の納骨堂。亡くなった人の遺骨は位牌壇の内部に安置される(東京都世田谷区で)

 閑静な住宅街に立つ日蓮宗寺院・常在寺(東京都世田谷区)。地下の納骨堂に約80基の位牌(いはい)が並んでいた。そこに121人の戒名が刻まれている。「7割が存命している方で、文字は朱色。金色は亡くなった方です」。同寺事務長の小山城史さんが説明する。

 同寺には、墓を持たず後継ぎがいない人などの葬儀・供養を家族に代わって行う永代供養墓がある。申し込むと戒名が授けられる。「お寺の信徒になったことを自覚してもらうのです。それが心の平穏をもたらします」と小山さん。

 同区内の主婦(76)は、3年前に家族3人で申し込んだ。戒名は「心鏡妙勢信女(しんきょうみょうせいしんにょ)」。書道などの趣味があり、雅号に使う「勢」の字が入っている。「生きているうちに戒名を付けることに最初は抵抗感がありました。でも授かってみると、自分らしい、いい名前。背筋が伸びるような感じがして、毎日を大切に過ごそうという気持ちになります」

 宗派を超えた僧侶らで組織する仏教情報センター(東京)事務局長の互井観章(たがいかんしょう)さんは、「生前戒名」の増加を実感している。実態を示す統計調査はないが、「都市部で増加する永代供養墓への申し込みが、戒名を付ける契機の一つになっているようです。自分の戒名を知っておきたいというニーズもあるのでは」と話す。

 戒名に自分の意向を採り入れてほしいという人もいる。天台宗系寺院・本寿院(東京都大田区)住職の三浦尊明(そんみょう)さんは「死んだら、愛する妻の名前を入れてほしい」「『夢』『絆』の文字を使って」といった要望を受けたことがある。

 希望をそのまま受け入れるケースもあるが、「話をじっくり聞いて、より良い戒名になるよう努めています」

 中央大教授の保坂俊司さん(比較宗教学)によると、戒名によく使う文字は宗派によって異なる。例えば、真言宗では「阿」、浄土宗では「誉」、日蓮宗では「妙」など。希望する戒名が宗派に合わない場合もあり、住職とよく相談したほうがよい。

 一方、戒名を付けずに葬儀をしてほしいという人もいる。仏教界向けの実務誌「寺門興隆」が2010年6月号で公表したアンケート調査では、3割の住職が「俗名を認める」と答えている。

 宗教評論家の大角(おおかど)修さんは「東日本大震災は、『鎮魂』や『供養』を身近なものとして捉える機会になった。どのような形で送られたいのかを考える人が増えることで、戒名への向き合い方もさらに多様化していく可能性がある」と話す。

戒名
 仏門に帰依した証しとして与えられる名前。法名、法号ともいう。本来は生前に与えられていたが、室町時代後期から、葬儀の際に与えることが広がったとされる。宗派にもよるが6~10字程度が多い。狭義の戒名はその中の2文字を指し、うち1文字を本名から取る傾向がある。


料金不透明、本来は「お布施」

 戒名を巡り、戸惑うことが多いのが、その費用だ。

 日本消費者協会が2010年3~6月に行った「葬儀についてのアンケート調査」によると、葬儀全体の費用は平均約200万円。戒名を付けてもらったり読経をしてもらったりして寺などに納めたのは同約51万円。個別にみると1万円から189万円まで、かなり開きがある。

 いわゆる「戒名料」については、寺側はあくまで自主的な「お布施」という立場だ。これについて、同アンケートには「相場が分からず困った」「生前に50万円払っていたのに、葬儀当日に20万円求められ、結局払った」といった声も寄せられている。

 寺などに納めた費用を「妥当」としたのは27・3%。「やや高い」が18・2%、「やむを得ない金額」も18・2%。「非常に高い」は0%だった。費用について、遺族らと寺側の認識が、微妙にずれている様子も浮かび上がる。

 読売新聞社が今年2~3月にかけて行った全国世論調査では、56%が「戒名は必要ない」と回答した。

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