がんの診察室
からだコラム
[がんの診察室]病気は人生の一部
この連載も今回で最終回です。様々な患者さんの言葉を紹介しましたが、がんや抗がん剤との向き合い方は、一人ひとり違います。最初から抗がん剤を拒否する人もいれば、効かなくてもすがりつく人もいます。
抗がん剤は、うまく使って効果が得られれば「がんとうまく長くつきあう」のに役立ちますが、効果がなかったり、副作用がきつかったりすることもあります。
マスコミでは、「抗がん剤は効かない」とか、「がんと闘い抜け」という極端な意見が取り上げられがちですが、現場では、そんなにすっきり決められるものではなく、私も患者さんと一緒に悩みながら診療しています。そういう悩みをあるがままに書いてきました。
この連載で伝えたかったことは、三つあります。
まず、抗がん剤には、いいこともあれば限界もあるということ。いい薬はたくさん出てきましたが、現実よりも期待が上回り、「もっといい治療があるはず」と、満たされない気持ちでいる患者さんも多いようです。限界を知れば、適度なバランス感覚で治療に取り組めるように思います。
二つ目は、どう生きたいかを考えてほしいということ。病気は人生の一部にすぎず、治療は病気の一部にすぎません。治療がすべてと思い詰めず、人生の目標に向かって、自分のペースで進むことが大切です。
三つ目は、自分らしく生きるためにできることはたくさんあるということ。病状が進んでも、治療に限界があっても、人生の希望がなくなることはありません。医療はそれを支えるためにあり続けます。これからも一緒に歩んでいきましょう。(虎の門病院臨床腫瘍科部長、高野利実) (おわり)
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