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タレント・細山貴嶺さんインタビュー全文(1)幼稚園からいじめに苦しむ

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 2歳で芸能界デビューし、太めの子役としてお茶の間に笑いを届けてきたタレントの細山貴嶺さん(17)。実は、笑顔の陰で長年いじめに苦しみ、自殺を図ったことさえある。いじめ克服までをつづった「デブ、死ね、臭い!を乗り越えて」(マガジンハウス)を出版した。(岩永直子)

細山貴嶺(ほそやま・たかね)
 1994年、東京都生まれ。テレビ番組「おはスタ」に出演する「おはキッズ」の1人として活躍したほか、「世界一受けたい授業」「英語でしゃべらナイト」など出演作多数。

 ――ずっといじめられていたと知り、驚きました。

 「幼稚園の頃から太り始め、いじめられるようになりました。子ども同士では、太っていると攻撃されやすいんです。小学校からインターナショナルスクールに進み、英語ができないことでまたいじめられて。ストレスで食べ、ますます太るという悪循環でした」

 ――どんないじめに遭ったのですか。

 「『デブ、死ね!臭い』という言葉の暴力はしょっちゅうで、工作を捨てられたり、出したはずの宿題がなくなったり。蹴られたり、突き飛ばされたり、身体的な暴力とダブルになって、どうしようもなく苦しかったですね。首を絞められて失神したこともあります。転校してもエスカレートし、先生たちはいじめを認めることさえしませんでした。いじめに加担していたのではないかと思うことさえありました」

 ――かなり色んないじめを受けていても、やり返してやりたいとか、恨むと思うことがなかったようですね。

 「苦しいという感情は常にありました。でも、そこで僕が、精神的でも身体的にでも、何かしらやり返してしまったら、いじめっ子と同じじゃないかなという気持ちがあって。いじめっ子と同じ事をしたくないという気持ちがありました。それに加えて、親からずっと言われていた、「やり返すな」というルールがあったんです。3日間おいて、冷静になってから考えるというのは僕としてはすごく大きな教えなんですね。その場でカーッとなって言い返してしまったら、仲がこじれてしまう。自分が苦しいんだよということを伝えるという意味では一つの手段かもしれないんですけれども、それで余計いじめがエスカレートするのも怖い。今振り返っても、僕はそれで良かったんだと思います」

 ――いじめられている子って優しい子が多いんでしょうか。よくそういう声を聞きますが。

 「やられても言い返すことができない。そういう意味で、優しい子はいじめられやすいのかもしれませんね。でも、それと同時に、いじめられる子って、無作為に選ばれてしまうと思うんですよ。くせっ毛だとか、眼鏡かけているとか、まったく普通のことなのに、そんなことでいじめられっ子になってしまうこともある。別の環境だと、いじめっ子がいじめられっ子になることもあるし。そういった意味では、優しい子の方がいじめられやすいイメージがあるけれども、誰でもいじめられる可能性はあるという気はします」

 ――本の中でもいじめっ子が、いじめられる側に回る可能性を書いているが、そういう事例を自分の周りでも経験したことがありますか。

 「1人とても強いいじめっ子がいて、その子に刃向かったりすると、今度は自分が標的になるかもしれないという恐怖が周りにもあったと思います。そういう意味で、本当はいじめたくないんだけど、自分を守るためにいじめに回ったんじゃないかなと思うような子も何人かいましたね。普段1対1でいるときはすごく仲良く話をしてくれるのに、いざ、いじめの雰囲気が作られると、いじめの側に回る。もしくはいじめる側に回らないとしても、見て見ぬふりをしてしまう。仲裁をするとか、何かしらいじめを止める行動を起こすと、自分が次はいじめられるという恐怖があったんじゃないかと思います」

 ――先生に関しても、2人きりの時は励ましてくれるのに、強い嫌な先生のそばでは何も言ってくれない先生がいたことを書いてますね。

 「そうですね。でも、それもある種しょうがないのかなという気がしますよね。1人1人色々と守るものがあって、先生だって、自分の家族かもしれないし、地位かもしれないし、なんであれ、ある意味守るもののために、仕方なくやっているのかなという気もします。ある程度、仕方ないのかなと思いますね」

 ――そんなにものわかりが良くなくていいと思いますよ。

 「そうですかね(苦笑)」

テレビ出演の時はまったく別の自分

体重が107キロのころ、中学1年の細山さん(提供写真)

 ――いじめられている時も、テレビ出演をして、人を笑わせていたわけですよね。その時は、心の中はどうだったんですか?

 「テレビ出演の時はまったく別の自分でしたね。学校での自分と仕事での自分は全然別で、2つの環境で求められているものは違うし、小さい頃から芸能活動をしてきたこともあって、ある種のプロ意識は芽生えていたんだと思います。仕事となったら、学生としての細山でなくて、仕事をする人間としての細山なので、お金をもらってやっている以上は、ちゃんとやらなくちゃいけないという思いがありましたし、それに太っているということで学校ではいじめられているけれども、テレビでは太っているからこそ芸能活動ができる。そういう意味では、太っていることは自分のアイデンティティでもあったんです。まったく正反対の環境だったので、仕事の時はぱっと切り替えて仕事をするという形でしたね」

 ――転校を繰り返していますが、深刻ないじめの場合、逃げちゃうことも一つの手だという考えもありますね。ただ、転校後も、かえって状況がひどくなるという経験もしているようですが。

 「確かに今の日本で言えば、転校してしまうというのも良いと思います。というのは、いじめは苦しくなったら逃げるしかないと思うんです。追い詰められて、自信を失って、中には自殺してしまう人もいるぐらいなら、脱出した方がいいし、転校も一つの手段だと思う。本を読んで少し不思議に思ったのですが、海外だといじめで一番悪いのはいじめる側という考えがはっきりあるそうです。海外のいじめ研究の第一人者のような人が、日本の対応を見て、『なんで日本では、いじめられる側が転校しなくちゃならないんだ』と言ったということが僕の中ではすごく印象的でした。海外のように、いじめた側が加害責任をとって転校するという考え方も、いじめ問題を考えていくうえで重要だと思います」

 ――いじめた側が停学や転校になるということは全く経験しませんでしたか。

 「僕の場合、いじめられている状況から脱出するには自分が転校するしかないと思っていました。いじめは、いじめられる自分が能動的に動かないと変わっていかないと思っていたんです。中学では、学校がサポートしてくれたので、自分から特別動かなくても対処してくれましたが、それまでのほとんどの学校では、自分から動かないと、何も変えられないし、動いても変わらないことが多かった。今振り返ると、そういったところは疑問に思いますね」

 ――そもそも、いじめによる自殺事件などを見ても、学校側がいじめを認めることさえしないということが多いですよね。

 「例えば、いじめの認知件数というのがありますが、行政に伝えるのは各学校であって、学校としても自分の学校の評判を落としたくないところが多いと思うので、そこでいじめは隠蔽されてしまうと思います。いじめを社会が認知するための、そういう仕組みや体制も変えていかないと、いじめは減少に向かわないと思います」(続く)

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