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日野原重明の100歳からの人生

介護・シニア

動悸について…放置してよいもの、よくないもの

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 日常の人びとの会話で、「動悸がする」という言葉や「胸がドキドキする」という表現は、改めて説明しなくても一般に分かっていると思われている。

 「動悸がする」という表現と、「心臓がドキドキする」という表現は同じことを言うのである。心臓が早くなったり、不規則になったりする時の感じも「動悸」と表現されている。

 人が階段を上るとか、小走りに走る時には、心拍は正常の1分間60~70拍が80拍以上になり、当人は心臓のドキドキ感を持つが、これは2~3分静かにしていると、心拍は元の数に帰って、当人は何も心配しないのである。

 しかし運動後の早くなった心拍がいつまでも続いているとか、心拍のリズムが乱れて、不規則になるのを不整脈という。いくつかの均等なリズムの心拍が予測より早めに来ると、これを早期収縮、または期外収縮と医師は呼んでいる。

 早期とはトン、トン、トンと打つのが、トン、トン、ト・トン、トンと打つことである。「年だから、時々早期収縮が起こっても心配ない」と医師は説明するかもしれない。老人のこの現象は、老人には白髪が現れるようなもので心配ない、と医師は説明する。そのような脈の乱れは心配ないものである。

心房細動による不整脈…続くと、血栓も

 ところが、心房細動と言って、心室は1分間に70回打っていても、心室の上にある小さな容積の心房が勝手に痙攣を起して、1分間に600回も打つとなると、心房細動と名付ける。心房に発生する頻数の刺激はその10回とか15回に1回しか心室に伝わらず、心室の拍動は不規則となり、脈の乱れが生じる。

 この心房細動による不整脈は、これが続くと心房内に血の小さな血栓を作り、それが大動脈から脳動脈や肺動脈に流れて脳血栓症(脳梗塞)を起こす。その場合は、流血が凝固して血栓形成を防ぐための抗凝血薬を処方する必要が生じ、これは定期的に主治医のところに通い、血液凝固時間を測定してもらって、抗凝血薬の量を決めてもらわなくてはならない。

甲状腺ホルモンによるものも

 そのほか、甲状腺機能亢進症(バセドー氏病)と言って、これは女性や老人に起こりやすいが、甲状腺からのホルモン分泌が増して心拍動が高まって、動悸を感じるのである。このような動悸は甲状腺ホルモンを抑える薬を処方すれば、動悸や不整脈も消失する。

 以上、動悸にはいろいろの種類があり、放置してよいものと、よくないものとがあるので、そういう場合は医師に相談することを勧めたい。

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日野原重明ブログ_顔120_120

日野原重明(ひのはら・しげあき)

誕生日:
1911年10月4日
聖路加国際病院名誉院長
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