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からだコラム

[がんの診察室]「普通の暮らしを」治療中止

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 「がんでも普通の暮らしをしていたい」。乳がんが肺に転移しているDさん(54)は一貫してそうおっしゃいます。

 13年前、乳がんの手術とホルモン療法を受けましたが、6年前にせきが出るようになり、左右の肺に転移がみつかりました。抗がん剤治療をしてもがんは進行し、せきはひどくなるばかり。別の抗がん剤で進行は抑えられたものの、せきはなかなかよくなりません。治療の意味について担当医に尋ねても答えはなく、思い詰めて5年前に転院し、私の診察室に来られました。

 「普通の暮らしをする」という目標を確認した上で、まずは、同じ抗がん剤をきちんと使うことにしました。これがうまく効いて、病気の勢いは落ち着き、せきもなくなりました。

 ただ、抗がん剤の副作用で「だるさ」が強くなり、約1年後、よく話し合って、この治療を中止することにしました。がんは消えたわけではありませんので、治療中止には勇気がいりました。でも、普通の暮らしを取り戻すにはそれがよいと判断しました。

 幸い、その後3年以上、病気の進行はなく、副作用からも解放されて、Dさんは元気にしています。私の診察室には数か月に1回訪れ、海外旅行の話などを楽しく報告してくれます。

 進行がんと言うと、つらい治療に耐えて「闘病」するイメージがあり、治療はどこまでも続けなければいけないと思われがちですが、治療せずに病気が落ち着いていることもあるのです。

 治療しないという選択肢も常に考えながら、自分の生き方に合った方針を選んでいくことが大切です。(虎の門病院臨床腫瘍科部長、高野利実)

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