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[がん医療の課題]ドラッグ・ラグ解消、既存薬も

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卵巣がん体験者の会「スマイリー」代表・片木 美穂氏

かたぎ・みほ 2004年に卵巣がんが判明。06年、「スマイリー」代表に。患者の立場からドラッグ・ラグ解消などの活動に取り組んでいる。38歳。

 患者の立場で、まずがん医療に望むのは、「救える命を救えるようにしてほしい」ということだ。

 日本では、海外で標準的に使っている抗がん剤の承認が遅れ、使えない状態(ドラッグ・ラグ)が長く続いていた。ここ数年、患者会の声を受けて、製薬企業が治験に乗り出すようになり、新薬については海外との差は縮小の方向に向かっている。ところが、既存の抗がん剤において、がんの種類によって「薬はあるのに、治療を受けられない」という状態が続いている。抗がん剤は複数のがんに有効な場合が多いが、日本では、がんの種類ごとに薬の承認・保険適用が行われているためだ。

 日本では未承認で保険がきかない種類のがんでも、国際的に有効と認められている薬は多い。だが、古くからある抗がん剤は、複数の企業から安価な「後発(ジェネリック)医薬品」がすでに出回っている。別のがんの新薬として治験を行うのは、費用や手間の面から現実的ではない。

 欧米では、既存の抗がん剤については、医師による臨床試験で有効性が証明され、一流の医学雑誌に掲載されれば、保険から支払われるようになっている。日本でも、がんの種類ごとに企業が改めて治験を行わなくても、医学的な有効性が証明されれば、保険で治療が受けられる仕組みを早急に導入してほしい。

 具体的には、各学会が国際的な標準治療を基に、人種差を考慮した診療指針を作り、これに基づいた治療が行われた場合は、保険がきくようにする。診療指針は、患者に最善の医療を提供するため、世界の最新の知見を反映したものにするべきだ。質の高い指針を作るには人手や手間がかかるので、国による財政負担も必要と思う。

 全国どこでも良質のがん医療が受けられるための「がん診療連携拠点病院」の指定が進み、全国388か所(3月現在)と5年前に比べ約100か所増えた。

 とは言え、抗がん剤の通院治療を行う「外来化学療法室」はできたが、がん専門医や看護師不足で機能せず、結局、入院で治療を受けている患者もいる。地方の患者から「診療指針と全く違う抗がん剤治療を受けている」と相談を受けることもある。

 拠点病院は、数を増やすだけではなく、各病院が本当に患者のためになる医療を提供しているか、質の検証も進めてほしい。地域ごとに必要な病院数、専門医、看護師などの数を考慮した配置も考える必要があると思う。

 来年度からの国のがん対策の骨格を定める第2次「がん対策推進基本計画」案が公表された。新しく、小児がんの拠点病院の整備が打ち出され、働く世代のがん対策として、がん患者・経験者の就労を国が支援することが明記されたのは前進だと思う。

 だが、計画策定にあたって、第1次計画の5年間で何が実現できて何が実現できなかったのか、実現できなかったのはなぜかという分析が足りなかったと思う。分析がないまま新たな計画を立てても、絵に描いた餅になりかねない。

 今も困っているがん患者は大勢いる。一刻の猶予もない患者も多い。その人たちに具体的に何ができるのか、国は真剣に考えてほしい。(聞き手・医療情報部 館林牧子)

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