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石井苗子の健康術

yomiDr.記事アーカイブ

やっぱりできれば行きたくない婦人科検診

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(がん検診で一番行きたくない場所のようです)


 日本女性の婦人科検診受診率は、世界的に低く、今も伸び悩んでいます。

 どうしてなのでしょう。先日、婦人科検診を呼びかける企画に参加しました。

 会場は補助椅子が出るほどの盛況なのに、どうも参加者の顔に満足感が現れていない。

 学会用のスライドなどを使って正確な情報が提供されていましたし、女性ホルモンの変化についての解説もあり、素晴らしい内容なのになぜか、物足りないようなお顔の人ばかりなのです。

 最後に参加者からの質問が上がってきました。

「子宮頸がんのワクチンは効果あるのでしょうか」

「子宮を全摘してもまだ検診は必要ですか」

 そうか! と思いました。

 もしかしたら参加者は、できることなら婦人科検診に行きたくないと思っているのではないかと。

「検診に行かなくてもがんにならない方法はないですか?」

「どんなことに気をつければ婦人科のがんにならないのかしら」

「子宮頸がんのワクチンは何歳まで有効?」

「自分で早期発見できるキッカケみたいなのありますか」

 といった事が聞きたい。

 そして、欧米のような「お気軽さ」が日本に定着しないのは、やはり男性ドクターが多いことと、婦人科のクリニックが少なくなってきていることに原因があるのでしょう。

 分娩台のようなベッドに上がることについて男性の発表者が、「お嫌かもしれませんが、カーテンもありますから……どうぞお気になさらずに」と何回も言うのですが、そのたびに逆効果になってしまっているような会場の雰囲気でした。

 カーテンがあっても、診察後、すぐ横の部屋で同じ男の先生から結果報告をされるのですから、お気になさらずにと言われても無理だという女性がいらっしゃるでしょう。

 いずれにしても、検診が妊娠の為だったり、がんの発見の為では、いくらPRをしても限界があります。

 受診率を上げたいなら、どう言えば来てくれるかといったコミュニケーションのありかたを考えなければなりません。

 ある男性ドクターが更年期のことを、「もうお払い箱だと言わんばかりに身体が壊れ始める時期」と解説していていました。確かにそうかもしれませんが、これではコミュニケーションの滑り出しから失敗です。

 更年期以降の女性の体は、妊娠から解放され、新しい体を自由にゲットしていく時期だ、ぐらいに言わなければ!

 更年期障害がいつ来るのかとビクビクしたり、やせ我慢して平気を装ったりしてないで、兆しが見えたら「そ~らおいでなすったかな」ぐらいの気持ちで婦人科で検査をして準備をして待ちかまえる。

 そうすれば症状が軽くて済むかもしれないし、次に現れる障害に対しても、ドクターと一緒に迎え撃つ体制が取れるかもしれませんよ? ホルモン補充を考えるために検診を受けるのもいいでしょう。更年期は我慢するものではありません。

 苦しまずに生き抜いていく方法を身につける時期です。生きている限り、「もうお払い箱」なんて年代はありません。というメッセージを前に出していくコミュニケーションが必要だと思います。

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石井苗子さん顔87

石井苗子(いしい・みつこ)

誕生日: 1954年2月25日

出身地: 東京都

職業:女優・ヘルスケアカウンセラー

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8件 のコメント

獣医学から派生した生殖医療

せっちゃん

産婦人科(生殖、分娩)は、頭数を効率的に増やす獣医学から人間に応用されたもののようです。女性に対する配慮が元々一切ないところからはじまっているの...

産婦人科(生殖、分娩)は、頭数を効率的に増やす獣医学から人間に応用されたもののようです。女性に対する配慮が元々一切ないところからはじまっているので、患者に対する扱いが客観的にみて医療行為なのかわいせつ行為なのかよくわからなくなっているのではないでしょうか。女性が動物やペット扱いされているとまでは言いませんが、そのような背景を理解した上で、女性医師の定員増、女性医師の労働環境改善などを訴えていくべきだと思います。

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婦人科検診用スカート

ひろ

1.まずは女医さんの病院リストがあるといいですんね。2.アトリエ・ミッチーさんが、陰部の露出を少なくなくし羞恥心や屈辱感を軽減するスカートを開発...

1.まずは女医さんの病院リストがあるといいですんね。
2.アトリエ・ミッチーさんが、陰部の露出を少なくなくし羞恥心や屈辱感を軽減するスカートを開発・販売されています。これがあるだけでだいぶ違います。万が一スカートの装着を拒む医院があれば、診察上拒む理由のない対応であり、セクハラに近いものと判断できますので、内診を受けずに退席されて結構だと思います。
3.日本人女性はなかなか声をあげて主張しません。これは美徳でもありますが、産婦人科業界において羞恥心への配慮や施策がすすまず、婦人病検診受診率が上がらない残念な結果にもなっています。出産時も必要不必要にかかわらず念のため行う会陰切開など、恐怖心や屈辱感から二子目以降をあきらめる女性が少ないくないのも事実です。
4.少子高齢化の一つの原因として産婦人科の女性の羞恥心や屈辱感に対する配慮の欠如があるかと思います。そうさせているのはわれわれ女性の声がまだまだ小さく弱いからです。

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男女のコミュニケーションの問題の根深さ

じぞう

記事や読者の方のコメントを読んで感じるのは、ここに挙がっているような男性の医師は奥さんとコミュニケーションできていないのではないか? ということ...

記事や読者の方のコメントを読んで感じるのは、ここに挙がっているような男性の医師は奥さんとコミュニケーションできていないのではないか? ということです。
男性産婦人科医であれば、自分は女性じゃないから女性の気持ちことは女性に聞かなければ分からない、だったら奥さんに聞いてみようか、ということにはならないのでしょうか?

もちろん第一には女性の産婦人科医を増やすことが望まれると思います。
ただ、結婚前に産婦人科にお世話になる女性は少ないことから、今回の記事のような事実をどこかでオープンに語れるようにならなければ、産婦人科医を目指す女性は増えないような気もします。

そもそもの問題として、医師という職業は「患者と良好なコミュニケーションができること」が1つの重要視されるべき能力だと思います。
ところがこのような記事を読むと、そうした能力が不足している医師が少なからずおられると感じます。

単純な話ではなく、なかなか根が深い問題のように思えますね。

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