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日野原重明の100歳からの人生

介護・シニア

老人の難聴

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 難聴とは、いわゆる耳が遠い状態をいうが、日本中には約600万人の難聴者がいるといわれている。その中の大部分は加齢とともに聴音が低下する老人性難聴である。

 老人になると、75~79歳代では普通の声では聴こえないという老人は20%となり、80~84歳代では40%にも増える。

 音の聞こえる仕組みを述べると、まず耳介に続く外耳道があり、次に鼓膜に響く音を内耳に増幅して伝える中耳(鼓室)がある。その奥には高低の音を受理する内耳の蝸牛のような構造で三半規管と言って中にリンパ液が流れている。この部分で高音低音の振動が音として電気信号に変えられて聴神経を通して大脳の側頭葉の聴覚中枢に達し、ここで初めて言語や音楽として認識するのである。

高音の聴力、80歳以上は非常に低下

 高齢の老人に訪れる難聴の検査には音叉のような単純な音を識別する検査法のほかに言語を聞きわける能力テストとがある。

 単純な音波がどの程度聞こえるかのテストは耳鼻科や人間ドックでの検査で、静かなボックスの中で検査が行われる。これによると、1秒間に124振動の音(ピアノでは中央のCの音の1オクターブ下の音)では、若い人に比し、70~80歳の老人もわずか2~3割しか低下していないことが多いが、80歳代以上になると中央のCの音より2オクターブ高い高音の聴力は非常に低下する。これを高音性難聴という。だから、音楽会に出席してもチェロのような楽器はよく聞こえるがフルートとなると非常に弱くしか聞こえなくなる。

言語性の難聴も

 このような老人性難聴に対して、言語性の難聴がある。つまり、音は聞こえていても言葉の聞き取りが悪くなる。つまり「ア」と「サ」との区別がむずかしくなる。目の見えない人は周囲の人が手助けをしてくれるが、耳の聞こえなくなった人は、周囲の人が聴きにくかった音を側で説明してくれる配慮がないので、騒がしいプラットホームでのスピーカーからの大きな声は、その言葉がその老人には全く聴き分けられないのである。

家族の会話の理解力低下/後方からの呼びかけ、聞こえない

 また老人は家族内での会話での理解力が落ち、家族と共に同じテレビを見ることができない。お客さんからの電話の受話器をとっても注文を受けられなくなり、老人はますます孤独になってしまう。

 また老人になると後方から呼びかける声が聞こえなくなる。そのほか今までは講演会で講師の語る内容が理解できたのが、後方の席に座ると音は聞こえるが言語の識別ができなくなる。

 そこでそのような聴力低下のある老人に私はなるべく講師がステージでしゃべっている真下の席を早く行ってとることを勧めている。そうすれば、講師の口唇の動きやジェスチャーがよくわかり、スライドの映像や字も鮮明に見えるので、文脈がよくわかるのである。

 私は外国の学会に出席する医師には、若い人にも英語の演説はなるべく講師の真下に座って聴くと、文脈を捉え、ジョークも分かると言っている。

耳にあった補聴器を選ぶことが大切

 そこで、老人性難聴への対策は、耳によくあった補聴器を選ぶことが大切だが、増幅の度を強めると周囲の雑音までもが大きくなって、非常にうるさくなるので、つい補聴器も外してしまうことになる。補聴器には安いものから高価なものまで、その種類は多いので、耳鼻科の専門医の指導を受けてほしい。

 以上、老人性難聴への知識と周囲に生活する人の配慮の必要なことを述べた次第である。

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日野原重明ブログ_顔120_120

日野原重明(ひのはら・しげあき)

誕生日:
1911年10月4日
聖路加国際病院名誉院長
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