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宋美玄のママライフ実況中継

コラム

妊娠中の旅行 大丈夫?

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 先週、初めて娘を連れて3日間ほど東京の家に帰ってきました。新大阪から新幹線で帰ったのですが、N700系のぞみには11号車に授乳やおむつ交換ができる多目的室があり、子連れの乗客は11号車を選んで乗っているようです。新大阪―品川間はおよそ2時間半なのですが、出発してすぐに授乳した後、品川に到着するまでずっと寝てくれ、とても楽でした。ビギナーズラックというところでしょうか。

 小さい子供を連れて遠出をすると、授乳できる場所、おむつが換えられる場所を気にしなくてはならないし、公共の場で泣いたりすると「静かにさせなくちゃ」と焦ってしまうので何かと大変です。そのため、子供が生まれる前、つまり妊娠中にお出かけしておきたいと考える人も少なくないようです。誰が作った言葉なのか知りませんが、「マタ旅」という言葉も生まれ、妊娠中の旅行を勧める動きもあるようです。

「マタ旅」の注意点

 妊婦健診をしていると、「今度旅行に行ってもいいですか」と妊婦さんに質問されることがしばしばあります。産婦人科医同士で話していると、医師もしくは助産師によって答え方にばらつきがあるようです。以前「医者のホンネ」という記事にも書きましたが、私自身が旅行好きということもあり、妊娠中だからといって旅行に行ってはいけないという指導は基本的にはしていません。

 ただ、積極的に妊娠中の旅行を勧める風潮には少し抵抗を感じます。

 「マタ旅」は商業的な理由で勧められていることが少なくありません。いわゆるマタニティ雑誌は商業誌ですから多くの雑誌や書籍と同様に「売れてなんぼ」なので、読者受けし、広告主が付きやすい紙面を作ることが求められます。その結果、読者が煙たがるような硬い内容や怖がるようなリスクに関する記事は敬遠され、ワクワクするような楽しい記事が誌面を賑わせるようになるのです(もちろん真面目な読者も多いですからためになる内容もあります)。

 妊娠中に来てもらい、子供が生まれてから再訪してもらおうという考えもあってか、マタニティ雑誌に広告を出すレジャー施設もあるため、そこへ遊びに行くことを妨げるような記事は当然書かれません。結果として妊娠中に旅行することにリスクがあることが読者には伝わらないことになるのです。

安定期=ノーリスクではない

 「安定期だから」「妊婦健診で特に異常だと言われていないから」と言って、旅行に行っても絶対に大丈夫、という訳ではありません。安定期という言葉はよく誤解を生むのですが、安定期=絶対に何も起こらないということではありません。

 母子手帳や検査データなどを常に携帯すること、旅先で何かあった場合にかかりつけ以外の妊婦を24時間体制で診てくれる産婦人科があるかどうか確認しておくことなどは当然のことです。ローリスクであることは絶対安全(=ノーリスク)とは大きく違うのですが、そこを理解している妊婦さんはそれほど多くない印象です。

妊婦さんは全てに優先か

 以前、日本新生児・周産期医学会で「東京近郊の巨大テーマパークからの産科緊急症例についての検討」についての発表がありました。ある巨大テーマパークからの救急搬送を一手に引き受けている病院からの発表で、多くの参加者が興味を寄せていました。テーマパークというのは立ちっぱなしで並んだり歩き回ったりしないと楽しめない施設なので、体調に影響したり切迫早産徴候が出たりしやすいとも言えます。

 妊婦さんを優先し、並ばなくても乗り物に乗れるようにするべきだと考える人もいるようです。他の公共の場では妊婦さんは優先されるべき存在であることに異論はないと思いますが、テーマパークにおいてはどうでしょうか。子連れの客も多い中、妊婦さんだけが優先されるというのは、個人的には不自然に感じます。妊娠しているからと言って自宅と産院周辺から出てはいけないというのは極端だと思いますが、妊婦だからどんな場でも優先されて当然というのはおかしいですよね。

 リスクを理解した上で転ばぬ先の杖を持って自己責任ですれば、妊娠中の旅行は構わないと思います。何事も要は常識とバランスです。巨大テーマパークを妊婦さんに楽しんでもらうためには近隣の病院のバックアップが欠かせません。その病院の医療従事者たちが気持ちよく搬送を受けられるために、テーマパーク側から配慮があるといいのですけどねえ。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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6件 のコメント

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コウノドリという産科をテーマにした漫画

nako

コウノドリ、にハマっていますちょうど、作品にマタタビの話題もありましたフィクションですが、ストーリーではマタタビ中の妊婦がハワイで気になる出血を...

コウノドリ、にハマっています
ちょうど、作品にマタタビの話題もありました
フィクションですが、ストーリーではマタタビ中の妊婦がハワイで気になる出血をし、産科医に指示を仰ぐシーンと、ニューヨークからきた人気歌手の妊婦が日本で出産に至り巨額の費用を請求される話が載っていました

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妊娠中の渡航、パスポートの盗難紛失に注意

聞いた話

海外在住の女性友達は現地で出産派と日本に帰国出産派といろいろ。航空会社が妊娠している女性が搭乗していると認識するには搭乗する航空会社にその旨を親...

海外在住の女性友達は現地で出産派と日本に帰国出産派といろいろ。
航空会社が妊娠している女性が搭乗していると認識するには搭乗する航空会社にその旨を親告しておくと搭乗者リストに書かれるでしょうから、パイロットが気を遣ってくれると思います。離陸前にスタッフがディスパッチャールールで話し会うし、離陸前のコクピットでチェックリストの読み上げの時に大人何人、子供何人とチェックします。

トランジットなどの場合はトランジット空港にトランジットホテルなどあれば時間に余裕度によっては数時間でも横になったりシャワーとか。

渡航先での医療にかかるとき(現地出産派の話)は通訳を入れる場合があります。全身麻酔などの場合は通訳(第三者)と付添人が対処するそうです。

場合によってですけど、航空会社が搭乗を断る場合もあるのでそこから移動ができない場合は宿泊費とかの問題もあります。

意外なのはパスポートの盗難。トランジット空港などで盗難、紛失すると再発行まで空港から移動できないそうです。1週間以上缶詰になった人が言ってました。出られないって意外と不便だなって。

妊娠中でも疾患があるなしでも主治医に電話ができるように渡航を主治医に伝えておくと何かの時、現地係官にも情報がいくのでわたしは渡航前は医者にいきます。検疫や税関で持っている薬などでのトラブルの場合、連絡可能な場合に限って主治医が電話対応してくれる場合もあります。

いまは厳戒態勢の空港も多々あるのでなおさら妊娠している事の証明書などが必要でしょうね(英訳も添付)。全身エックス線検査もある場合もあります。

帰国出産する人は出産にかかる費用は自費で自分の住民権のあるところで最終的精算で毎回やってるそうです。日本の出生証明を英訳して提出とか。慣れるとそういうものらしい。



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旅行悩んでます

さかな

来週北欧旅行に行く予定です。しかし、妊娠が発覚、7周目です。四人目です。家族の協力があり、子どもを置いて仲の良い友達二人と行く予定でした。担当の...

来週北欧旅行に行く予定です。
しかし、妊娠が発覚、7周目です。
四人目です。

家族の協力があり、
子どもを置いて仲の良い友達二人と行く予定でした。

担当の先生には「だめじゃないけど、行かないほうがいいんじゃない」とのコメント。

理由としては、現地が多少放射線量が高いのと、
現地での医療費の高さと、
フライト中の大変さでした。

医療費は妊婦加入できる保険に入ったのでOK
あとはどうしようと、もんもんと様々なサイトを読んでいたのですが、
こちら、 はい さんのコメントに勇気付けられました。
ドイツではそうなんですね!!!
民族的な体質とかあるかもしれませんが、
なんだかほんと、行こうと思えました。
そしてとっても気分が明るくなった。

日本って出産育児に暗いのかな。
というか改札で舌打ちって、その時点で暗いですよね。

私は子供を産むまでは気づきませんでしたが、
子供を産んでからとっても気持ちが塞ぎました。
これはマタニティーブルーとかでなく、
社会的にそう思わせる構造なんでしょうか。

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