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海原純子のハート通信

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がんアンケート中間報告 患者同士が支え合う場を

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 がんサポートアンケート、既に360人の方から協力をいただきました。312人の参加があった先週の時点での結果を報告したいと思います。

 アンケートでは、がん治療に関して感じたことについて自由記述をお願いしていますが、8割の方がご意見で体験談を語ってくださっています。今回はその貴重なご意見をご紹介したいと思います。

 70代の男性の方はご自分の希望する治療を受けたかったものの、その後のアフターケアを考えると地方に帰らなくてはならず、地域差を感じたということです。家族やサポートの方が地方にいらっしゃる場合、こうした問題がおこるのは大変残念なことです。地域差は縮小しているとはいえ、やはり、専門医は都会に集まる傾向があるといえます。対策が必要です。

 50代の女性は抗がん剤で不妊になりましたが、質問さえできなかった25年前の経験を語ってくださいました。そうした経験にもかかわらず、ご自分を幸せな患者だったと思えるその心の大きさに感動しました。

 40代の女性は一人暮らし。1人でがんを受けいれ治療を受けられました。サポートしてくれる人の必要性を指摘してくださっています。確かにその通りで一人暮らしの方に対するサポート、精神面、生活面、すべてにおいて考えていく必要があります。

 70代の男性は当時、最良と思われたが、今はもっと良い治療があったことに複雑な思いを感じていらっしゃいます。

 さて、3月16日、群馬県太田市の福祉協議会の協力を得て、がん患者さんの方たちの治療選択に関するご意見をお聞きする会が開かれました。その中で、サポートのボランティアをなさっている、ご自身も大腸がんの経験を持つ女性がこんな風に語っていました。

 「がんの患者さんの心は波があって、さあ元気で行こう、と思っても気持ちが落ち込んでしまう日もある。そんな時にお互いに支え合う仲間がいて、語る機会があるのが大切です」

 がんは、病巣を治療するほかに、不安や気持ちの落ち込みをいかに支え合うか、コミュニケーションやネットワークがその後の経過を左右するカギといえます。

がんアンケートの自由記述内容(省略や表現を変えたものがあります)
年齢 性別
内容
50歳代 女性

当時の医師の知識のなさから抗がん剤の副作用で不妊になってしまうことを知らずに(なので、質問すらできませんでした)治療を受けたことが残念です。それ以外は、25年前の発病にもかかわらず、私は、本当に幸せな環境で幸せな患者だったと思います。医師には、病気を治すのではなく、病人を治すという意識を持ってほしいと思います。

40歳代 女性

自分は一人暮らしであり、実家も遠方なため、告知から治療選択まで、医師の説明を一人で聞き一人で決断した。治療を選択する場面では、まだ告知のショックから立ち直れていない状況だった。頭が混乱している上に、忙しそうな医師に細かな点まで質問するのははばかられ、ほぼ医師が勧める通りに治療は進められた。一人暮らしの人が増えている今、患者が望んだ時には、早い段階から心理士やソーシャルワーカーなど、メンタルや経済面でじっくり相談できたり、治療選択場面に付き添ってくれる人がいたら心強かったと思う。一人でなく、考えることに付き合ってくれる人がいたら、後になって、違う治療法もあったのにと悔やむことがなかったと思う。

70歳代 男性

当時最良と思われる方法を選んだつもりだが、医学が進歩し今はもっと良い治療法があるようだ。時代の流れでしょうがない。

70歳代 男性

都会で最高の手術を受けたかったが、地方に帰った時、フォローができず、手術のグレードを落とさざるを得なかった苦い経験がある。このときほど、地域格差を感じことはなかった。


 がんアンケート調査にご協力いただける方は、下記アドレスからお入りください。


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海原純子ブログ_顔87

海原 純子(うみはら じゅんこ)

1976年東京慈恵会医科大学卒業。日本医科大学特任教授。医学博士。2008-2010年、ハーバード大学及びDana-Farber研究所・客員研究員。現在はハーバード大学ヘルスコミュニケーション研究室と連携をとりながら研究活動を行っている。

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