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日野原重明の100歳からの人生

介護・シニア

総合診療医とは

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 最近、総合医療という言葉が医学会では非常に注目を浴びてきている。

 これまでは、臨床医学の各専門家が専門性の実力の有無を試験により検定して、循環器専門医とか呼吸器専門医とか、内分泌専門医とか、神経専門医などの検定を行うことが普及してきたのである。これは広い意味での内科系の領域だけでなく、外科サイドでも脳外科専門医、消化器外科専門医、腫瘍学専門医などの専門家としての検定が広く行われているのである。

臓器別専門医と、総合的な能力を持つ医師

 臓器別専門医に対して、総合的な能力を持っている医師を区別すべきであるという考え方が今広がっている。将来的には医師の3~5割位が総合医であってよいのではないかという考えもあり、今より多くの若い医師がこのような分野に進んでゆくのではないかという考えから、それでは彼らをどのような教育的環境の中で成長させればよいかが問われているのである。

 すでに開業している医師は、必ずしも幅広い臨床能力を持っていない。昔大学の医局で専門性に向かって学習する年月が経つうちに医局での助手、講師など安定した役職につけない医師はあきらめて、開業でもするかと診療所を開くことが多い。彼らは幅広い病気を持つ患者を受け入れる知識も経験もないために、総合医になれるための講座を受けようと望む医師も増えてくるのではないかと思われる。

 日本医師会の学術推進会議が2008年にまとめた報告書、「かかりつけ医の質の担保について―日医認定かかりつけ医(仮)の検討」はまさにこのような学習システムを言うのである。

 幅広い能力を身につけるために勉強することはそれ自体は誠によいと私は思う。

 一般に患者は「自分では判断できない体の異常の相談にのってくれるお医者さん」、「持病などをある程度チェックしてくれるお医者さん」と言う二つの役割を期待するのである。

 また僻地や小さな町で、医師が1人か2人しかいないとなると、何でも診なくてはならなくなり、そのためには幅広い領域の病気を見る一般に、「ジェネラリスト」、つまり総合医の存在が必要となるのである。

 都会においては、総合病院に行くと各科の専門医は揃っていても、患者を幅広く見ることのできる総合医は、病院内には必ずしもいないのである。

健康管理医、英国では住民に割り当て…日本では養成機関なし

 日本では、英国で始まったプライマリ・ケアを担当する医師が人口2000人に対して必ず1人の健康管理医が政府から割り当てられており、住民にどのような病人が出ても、真っ先に相談でき、その下で診療を続けるか、またはもっと専門性の技量をもつ専門医に回すかをきめる家庭医の制度が整っている。そのような医療をプライマリ・ケア医学と言って来た。しかし日本ではそのような医師を養成する機関がなかったのが日本の大きな問題である。

 日本にはプライマリ・ケア学会、総合診療医学会、家庭医療学会など、目標はほぼ同じで、似たりよったりの学会があったが、最近プライマリ・ケア連合学会という名で、統合する動きが進み、近年それがやっと実現されるようになったことは、住民にとって非常に喜ばしいことである。

 この総合医の教育には、総合医の指導者がいる総合病院で、このような医師の養成されるプログラムが実施されなければならないのである。

 英国では住民は自分の健康管理をしている医師にまず相談し、その指示により、専門医の下や総合病院に送られるが、日本の国民健康保険制度下では、患者はどこの専門医でも、または大学病院でも待ち時間が長くても初診が受けられる制度になっている。このことが住民が無駄な医療を受け、無駄な時間を費やすことになるのであり、健康保険制度そのものをも改めることが問われているのである。

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日野原重明ブログ_顔120_120

日野原重明(ひのはら・しげあき)

誕生日:
1911年10月4日
聖路加国際病院名誉院長
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