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からだコラム

[がんの診察室]「薬が効いている」実感大切に

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 「抗がん剤は効かないって本当ですか?」

 1年ほど前、ある雑誌に、「抗がん剤を使ってはいけない」という内容の記事が掲載され、私の診察室でも、この記事のことを患者さんから度々聞かれました。

 がんの患者さんの多くは、がんや治療に関する情報を探し求めていて、このような記事にも敏感です。出版する側は、刺激的な見出しや内容で読者を引き付けようとして、時に、それが行き過ぎてしまうようです。この記事に翻弄されてしまった患者さんは少なくないと思います。

 間もなく、別の雑誌に、抗がん剤治療の専門医から「抗がん剤は効く」という反論が掲載されました。臨床試験のデータに基づき、有効性を丁寧に説明していました。こちらの主張の方が科学的に正しいのですが、読者の心には必ずしも響かなかったようです。

 その後も「効く」「効かない」の議論は続きましたが、医師の視点だけで、患者さんの視点が忘れられているようでした。「効く」というのは治療目標に近づくことで、治療目標は患者さんの価値観によって様々です。それを考えずに効くか効かないかを論じることはできません。

 大事なのは、患者さんと医師が治療目標を共有し、力を合わせて取り組むことです。検査で客観的な「効果」も見ますが、本人が「効いている」と実感できるかどうかがより重要です。

 抗がん剤で目標に近づけることもあれば逆のこともあります。いいとか悪いとか決めつけず、自分にとっての「効果」を見つめながら、使うべき時に適切に使い、そうでない時には深追いしないのがよいと思います。(虎の門病院臨床腫瘍科部長、高野利実)

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