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宋美玄のママライフ実況中継

コラム

母乳育児のメリット、デメリット

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 あっと言う間に2月も終わりで、明日で娘は生後3か月目になります。最近、心なしか昼夜の区別がついてきたようで、昼間はたくさん母乳を飲んだ後も起きていていることが多く、夜は5時間くらいまとめて寝てくれる時もあります。

 起きている間はぐずぐずと断続的に泣き、その度に抱いてあやしているので、なかなか両手が空く時がありません。こちらが食事中の時に娘が泣くと、片手で抱きながら食べなくてはいけないので、スパゲティなどは食べるのに技術が要ります。

授乳が足りない?

 まさに娘専属の授乳マシーン兼あやしマシーンという日々なのですが、時々、母乳が満足に出ているのか気になることがあります。授乳後に寝ついたと思ったらすぐに起きてしまったり、あやしてもあやしても泣き止まなかったりする時です。

 何をしても泣き止んでくれず、どんどん顔を真っ赤にして喉も裂けよとばかりに大声で泣かれた時にミルクを飲ませたら、嘘のように眠りこけたりすると、ああ母乳が足りないのかなあ、と思ってしまいます。おむつやベビー服がだんだん小さくなってきて、おしっこやうんちがたくさん出ているので、足りていると判断していたのですが、なかなか泣き止んでくれないことが続くと、本当はもっと飲みたいのかなあと不安になるのです。

「いいおっぱいです」

 子育て中の友達2人が助産師によるマッサージで母乳の出が良くなったと言うので、ものは試しと思い、友達が通っていた助産師さんのところに行ってみました。

 そのマッサージはなかなかの超絶技巧で、ピューピューと母乳を飛ばしながら、「産後2か月目にしてはとてもいい状態です。時間が経ってもあまり張らないけど、赤ちゃんが吸うと母乳がたくさん出てくる、いいおっぱいです。」と言われました。状態を評価してそう言ってもらえると、母乳が足りない訳じゃないからミルクを足さなくても大丈夫なんだと自信が持てました。

 両側の乳頭の先に常に水疱が出来ていて、授乳する度に剥き出しになった神経を刺激されたかのような激痛が走るのですが、それは母乳が勢いよく出てむせてしまうために娘が浅めに吸着するのが原因だと分かりました。出初めが勢いよく出るので少し手で搾乳してから吸わせるといいと言われたのですが、いろいろ試してみても一向に良くならず、ラノリン(羊の脂)を乳頭に塗ってラップをしています。特に悪化した時は搾乳してから哺乳瓶であげています。電動と手動の両方の搾乳器を買ってしまいました。

母乳育児のメリット、デメリット

 母乳育児にはメリットとデメリットがあります。メリットについては利便性や経済性についてよく語られることが多いですが、その他にもオキシトシンが分泌されて産後出血が減り、エストロゲン分泌が抑制されるため閉経前の乳がんが減り、卵巣がん、子宮体がんも減るとされています。

 また母乳を通して母親が食べたものの匂いと味を学習し、食育につながり、乳頭・乳輪を吸うことで顎や顔面が適切に発達し、SIDS(乳幼児突然死症候群)の予防につながると言われています(母乳が出なくても吸わせるだけで効果があるそうです)。

 デメリットとしては、黄疸が長引きやすい、乳房・乳頭のトラブル、授乳するのに場所を選ぶ、などがあります。

 母乳育児にメリットがあることに異論は少ないと思いますが、すべての母親が完全母乳育児を目指すべきかと言うと、私はそうは思いません。

 母乳の出方も家庭の事情も個人の性格も人それぞれです。例えば「乳頭の刺激によってプロラクチンという母乳を分泌させるホルモンが出るので、夜中でも3時間毎に赤ちゃんを起こして吸わせましょう」とよく指導されます。それは理論としては正しいのですが、そんなことをしなくてもあふれるほど母乳が出る人もいれば、実行しても分泌が悪く自分を責める人もいます。母乳育児が思うようにいかなくて悩んだことのある人が実はかなりいることを、出産後に知りました。

「良い出産」と「その他の出産」

 母乳に限らず育児については、「母親なのだから」を枕詞に「~すべき」とか「~してはいけない」とか言われたり、「甘えている」とか「ふさわしくない」など当事者以外からいろいろ批評されたりしがちです。

 しかし、ビジネス戦略や受験などと違って、「母親のあるべき姿」というものは一部の幸運な人だけが達成できるものであってはならないと思うのです。もう子供を産んでしまった後に一部の人しか越えられないハードルを課してしまえば、脱落した母親とその子供はどうなってしまうのかと思います。

 同じことが出産にも言えると思います。全員が出来るはずのない出産(例えば医療介入のない出産や傷のない出産)を「良い出産」とし、その他の出産をけなす人がいますが、「良い出産」とは選ばれた一部の人だけのものであってはいけないと思います。(これについては語りだすと長いのでまたいずれ取り上げさせてください)

 日本人は真面目なので、あれこれ言うと一人で抱え込んで追い詰められてしまう人も多いと思います。それでメンタルヘルスに支障をきたした人が、「それなら初めから産むな」とまで言われてしまうことも。

 完全母乳でも、混合でも、人工栄養でも、母親が笑っているのが一番ですよ、と患者さんに言ってきました。その言葉にほっとして涙を流したお母さんは1人や2人ではありません。

 もっと気楽に育児が出来るよう、「母親のあるべき姿」のストライクゾーンを広げた方が、多くの母親と子供が幸せになると思うのですけどねえ。

参考 : 産婦人科治療2009 vol.99 No.4 母乳育児のすすめ(水野克己)
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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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11件 のコメント

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初めまして

ママ

初めてコメントします。私は妊娠前から精神科に通っています。妊娠の時から元気な赤ちゃんが産まれくれる事を毎日願っていました。元気な赤ちゃんが産まれ...

初めてコメントします。私は妊娠前から精神科に通っています。妊娠の時から元気な赤ちゃんが産まれくれる事を毎日願っていました。

元気な赤ちゃんが産まれくれてとても嬉しいです。

産後は母乳が当たり前と思っていましたが、産後も精神科に通っているので人工乳です。旦那の理解がなくてストレスになっています。

笑顔が一番と言う言葉が嬉しかったです。

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喜子ママのこと

よっちゃん

頑張って、育てている私妻自身ですから、良かったです。

頑張って、育てている私妻自身ですから、良かったです。

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混合

みつき

初めて投稿させていただきます。私は一昨年子宮外妊娠で宋先生にお世話になりました。その後、自然妊娠をし、現在は3ヶ月の男の子のママになりました。入...

初めて投稿させていただきます。私は一昨年子宮外妊娠で宋先生にお世話になりました。その後、自然妊娠をし、現在は3ヶ月の男の子のママになりました。
入院中、悔しくて泣いていた日々を先生が明るく声をかけてくれた日々を思い出します。先生も出産されたようでおめでとうございます。
さて、私は4月から仕事に復帰することになりました。4ヶ月で保育園に預けることになり、当初から助産師さんと混合育児で行くことを相談していました。
最初の1ヶ月はおっぱいもはり搾乳しては冷凍するようにしていましたが、最近はおっぱいも慣れてきたのか、昼間はあまり張らず、母乳をあげている夜はきちんとおっぱいがはります。
しかし!!先日保育園の説明会に息子を連れて行ってから、なんだかミルクを嫌がるようになりました。おっぱいにしがみつき、怪獣のような鳴き声に・・・。何かを察しているのでしょうか?

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