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骨の病気 ―― 予防 ・ 診断 ・ 治療の最前線

イベント・フォーラム

(6) 討論 健康寿命を延ばそう

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パネリスト
  • 岩本 幸英 氏(日本整形外科学会理事長、九州大学大学院医学研究院 整形外科 教授)
  • 遠藤 直人 氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科 整形外科学分野 教授)
  • 齋藤 知行 氏(横浜市立大学 整形外科 教授)
  • 田中 正 氏(国保直営総合病院 君津中央病院 副院長・千葉大学医学部 臨床教授)
  • 高橋 和久 氏(千葉大学大学院医学研究院 整形外科学 教授)
コーディネーター前野 一雄(読売新聞東京本社 編集委員、METIS委員)

 

変形性膝関節症

 前野 : 早期に軟骨を減らすのを防ぐことが鍵と感じましたが。

 齋藤 : 加齢は避けられませんが、軟骨の変化をできるだけ抑えることはできます。膝関節自体は曲げたり伸ばしたりすることで関節軟骨に栄養が行き渡ります。40代を過ぎると膝を伸ばす筋肉である大腿四頭筋が急速に落ちるので、意識的に強くすることが重要です。

 前野 : 人工関節の手術が増えているそうですが、うまくいったケースとともに、全然よくならないという声も聞きます。執刀医の力量の差が大きいのでしょうか。

 齋藤 : お話しづらい面もありますが、全く否定することはできません。いい人工関節が開発され、手術の支援機器、ナビゲーションシステムが手術現場に積極的に導入された結果、確実に人工関節を設置できるようになりました。

 しかし、患者さんの手術に対する期待度や障害がどの程度なのかによって、手術の適用があり、その辺りがうまくかみ合わないとなかなかいい結果は出ません。治療する側との信頼関係を最初にしっかり構築することが重要です。

 前野 : 最近は、人工関節にすごくいいものが出てきたと言われました。日本に入ってきたころは海外の製品が大半で、日本人と欧米人には、体質の違いや生活スタイル違いもあります。

 岩本 : 人工関節は今のところはまだ欧米の製品が多く、日本人の生活にマッチしていないところもあります。欧米の生活では90度膝が曲がれば十分です。しかし、日本人の生活ではもっと曲げる必要あります。実際に製品化もされてきており、従来よりも日本人の生活に合った人工関節の開発に期待したい。

 前野 : 80歳では人工関節手術は無理と言われました。年齢的な条件がありますか。

 齋藤 : 高齢の生活様式やライフスタイルの多様化により、暦年齢だけで手術の適応を考えることは全くなくなりました。どういう生活をしているか、合併症の有無で、手術の適応を決めるのが一般的です。80歳でも、内臓等に疾患がなく、心臓や呼吸器も問題がなければ、人工関節の手術は十分できます。人工関節の寿命も30年というような長く期待できるので、65歳でも生涯十分大丈夫だと思います。

 前野 : スポーツジムで運動し過ぎると、膝関節症になるというのは本当ですか。

 齋藤 : 限度を超えてスポーツをし続けると、変形性関節症になる可能性は十分あります。そのため、例えば運動した翌日に痛みが出たり腫れたりというような状況は運動の負荷が大きいことになります。歩くことだけでも全身の体の80%の筋肉を使うので、適度な量の運動を心掛けてやるべきです。

骨折

 前野 : 小児の骨折が、保存治療から積極的に手術をする方向へ変わってきている理由は?

 田中 : 昔は「3週間寝ていなさい」で済みました。ですが、じっと寝ているのと動くのでは、明らかに動いたほうがいい。大人の考え方や治療の概念を、子どもにも適用するようになりました。

 前野 : 子どもの骨折が増えている中、幼稚園児は増えていないようですが、理由は?

 田中 : 一つは、幼稚園、保育園の環境です。けがをさせないように危険な遊具は置かないとか、机の角は丸くしてスポンジを張るなどの対応をしています。その結果、けがが表面にあまり出てこないのではないかという理由が挙げられています。

 前野 : 最近の子どもたちには「3間(さんま)不足」と言われていましたが、どういうことでしょうか。

 田中 : 3つの間とは、仲間、時間、空間のことです。運動に関しては特に減っている。昔はすることもないから、外で友達とわいわい遊んでいた。あるいは周りに野原がいっぱいあった。最近はテレビゲームばかりです。

腰痛

プログラムコーディネーター : 岩本 幸英 氏(公益社団法人 日本整形外科学会理事長、九州大学大学院医学研究院 整形外科 教授)

 1978年 久留米大学医学部卒業。九州大学大学院博士課程終了。米国NIH(国立衛生研究所)留学、九州大学整形外科助教授などを経て、1996年より現職。

岩本 幸英 氏

 前野 : 腰痛では、安静にしろと言う先生と、痛くても適度の運動は必要だと言う先生がいます。詳しく教えてきださい。

 高橋 : 例えば、ぎっくり腰の自然経過は、3日ぐらいは動けない、ただ1週間ぐらいから少しずつ動けるようになって、2か月で元通りになります。激しい痛みでも、医者が強制的に、「あなたはぎっくり腰だから3週間寝ていなさい」というような言い方をするのはあまりよくないことが、比較研究で証明されています。

 動ける範囲で動いていた方が回復の程度が後々いいとの報告がたくさんあります。よくゴルフをする方は、腰が痛くなるからゴルフをしないと言います。しかし、私はした方がいいと思います。対策は必要ですが、痛くなるかもしれないと全部控えてしまうと、かえってよくありません。

 前野 : サプリメントの質問が多くありました。サプリメントの考え方に触れた上で、今回の総括をお願いします。

 岩本 : サプリメントが効くか効かないかということについて関心があると思います。効果があるいうのもあれば、効かないという報告もあり、はっきりしないのが本当のところです。

 自己診断でサプリメントを使う危険性もあります。サプリメントを使い、もし効かなかった場合や良くならなかった場合は、診断というプロセスが必要です。きちんとした診断を受け、治療法を選んでください。

 日本整形外科学会は運動器疾患の診断と治療を通じて皆さまの健康寿命を延伸し、皆さまの日常生活を幸福にすることを目指しています。

 前野 : ありがとうございました。(終わり)

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