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いきいき快適生活

介護・シニア

[認知症と向き合う](23)なぜ暴力を振るうのか

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 訪問診療で訪れた70歳代の認知症の男性宅に、男性が利用しているデイサービスの担当者から私あての手紙が残されていました。

 手紙にはこうありました。「他の利用者様に暴力を振るわれました。薬などで調整できませんか。このままでは当施設で受け入れができません」、と。

 男性は家にいればそういう様子はないのですが、施設では怒鳴り散らし、時には暴力も振るうそうです。

 認知症の人が暴力を振るう場合、「周辺症状」が出たと言われます。アルツハイマー型認知症では、暴言、徘徊(はいかい)、妄想などが相当するようです。医学的には、脳の変化が直接的な原因で起こる症状以外のものとされます。脳の変化に加えて、性格や生活史、健康状態、人間関係など様々な要因が絡み合って起こるわけです。

 そうだとすれば、「周辺症状」は、その人へのケアの「結果」として起きるものなのだと言えます。

 認知症の人の困った行動を、「これは暴言だ」と解釈すれば、「治そう」と思うのは自然な気持ちでしょう。しかし、「暴言」という言葉を使わずに、「なぜそんなことを言うのだろうか」と考えていけば、別の姿が見えてきます。

 もちろん、生命の危険が迫るような状況もあり、単純には言えません。ただ、短絡的に薬で「症状」を押さえ込む前に、やるべきことはあると思うのです。

 ナチスの強制収容所から生還したビクトール・フランクルは、「夜と霧」という本で、「異常な状況では異常な反応を示すのが正常だ」と述べています。認知症の人の置かれた環境が、その人にとって異常なら、異常な反応をするのは自然なことです。なにより、その人の気持ちを探る方向に心を向けた方が人間らしくありませんか。(木之下徹、「こだまクリニック」院長)

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