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(4) 討論 「腰痛」 原因不明が大部分

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パネリスト
  • 岩本 幸英 氏(日本整形外科学会理事長、九州大学大学院医学研究院 整形外科 教授)
  • 遠藤 直人 氏(新潟大学大学院医歯学総合研究科 整形外科学分野 教授)
  • 齋藤 知行 氏(横浜市立大学 整形外科 教授)
  • 田中 正 氏(国保直営総合病院 君津中央病院 副院長・千葉大学医学部 臨床教授)
  • 高橋 和久 氏(千葉大学大学院医学研究院 整形外科学 教授)
コーディネーター前野 一雄(読売新聞東京本社 編集委員、METIS委員)

 

腰痛

パネリスト : 高橋 和久 氏(千葉大学大学院 医学研究院整形外科学 教授)

 1976年 千葉大学医学部卒業。千葉大学助教授、同附属病院 副病院長、2011年 同医学部 副学部長。

 

高橋 和久 氏

 前野 : 次は腰痛について、高橋先生にお願いします。

 高橋 : はじめに結論を申します。一つは、腰痛は非常に頻度の高い愁訴ですが、大部分は重篤なものではありません。2番目は、腰痛の大部分は無理に安静する必要はありません。自分の痛みに合わせて体を動かす方が腰痛にはよいとされています。この2点が、結論です。

 10人に1人は腰痛を抱えています。太ると腰が痛くなるといわれます。体の重心は背骨の前にあります。直立位をとるには、背中の筋肉を緊張させて姿勢を保たなければならず、椎間板という軟骨には体重より大きな力がかかります。従って、妊娠、あるいは太ったことで重心がわずかに前方に移動すると、椎間板にかかる力が増えます。

 立っているだけで、椎間板あるいは腰椎には体重の1.4倍の力がかかります。体重70kgで100kg近くかかります。バケツいっぱいの水を持って20度ぐらい前屈すると、体重の2.2倍ぐらいの力がかかり、腰椎には非常に負担がかかります。

 腰痛を生じる疾患には、腰椎や背骨の疾患だけではなく、内臓の病気、まれにがんや、大動脈瘤、子宮内膜症、尿管結石などがあります。でも、一番頻度が多いのは腰椎疾患です。

 原因が分かる腰痛には、化膿性脊椎炎、背骨の腫瘍、交通事故などの腰椎骨折、椎間板(ついかんばん)ヘルニアです。ただ腰痛がなくてもMRIで見ると椎間板ヘルニアがあり、椎間板ヘルニアが全部腰痛の原因とは言えません。

 原因の分からない腰痛はたくさんあります。腰痛の80~90%の原因は正確には分かりません。整形外科でレントゲンを撮り、「ここの椎間板が狭い」「分離がある」「すべりがある」「これが痛みの原因です」と言われます。しかし、それが本当に今の腰痛の原因なのかは難しい。非特異的腰痛といい、原因が分からない腰痛が大部分です。

 その中のごく一部が、慢性腰痛症となります。痛みが長く続くだけではなく、痛みが強く治りにくく、痛み自体が病気になります。でも、こちらの頻度は少ないです。

図1

 腰椎椎間板ヘルニアの方は、前後に背骨はあまり動きません。「疼痛性側弯」といい、後ろから見ると、痛みのために背中が傾いています。これはヘルニアがよくなるか、痛みがなくなれば真っすぐになります。

 椎間板ヘルニアを見分ける方法は、仰向けに寝て、両脚を伸ばしたまま、片足を持ち上げます[図1]。「坐骨神経痛」といいますが、その時、お尻から脚の後ろにかけて電気が走るようにビリッとくる痛みがあれば椎間板ヘルニアの可能性が高い。典型的には30度ぐらい上がったらビリビリくるのが特徴です。

 腰部脊柱管狭窄症は一般的に中高年に起こり、腰痛と下肢痛があります。歩きにくく、脚の痛みやしびれが強くて立ち止まる。1分ぐらい休むとまた歩けるようになる。これら「間欠跛行」が特徴的な症状です。

 自転車に乗ったり、カートを押したりすれば楽なのが、脊柱管狭窄症の特徴的な症状です。前かがみの姿勢が腰の反りがなくなり楽なのです。コルセットなどをうまく使うと、歩けなかった人が歩けるようになります。それからストレッチ。ひざを抱え込む、おじぎをする、そして背中を伸ばすことが、脊柱管狭窄症には効果的です。

 脊柱管狭窄症の全部が手術になるわけではありません。軽い人や中ぐらいの人の約3分の1は少しずつ悪くなりますが、約3分の1はあまり変わらない、約3分の1の人はどういうわけかよくなります。これは狭いのが広がるわけではなく、よくなるのは脊柱管狭窄症の自然経過です。

 手術を考慮するケースには、歩くと会陰部や肛門の周辺に灼熱感がある、おしっこが出しにくい、頑固な便秘、続けて歩ける距離が50~300メートル以下。このような場合が続くのなら手術をした方がいいでしょう。

 次に、軽い腰痛と重い腰痛の見分け方です。軽い腰痛の場合、腰痛だけで、下肢痛や下肢のしびれ、歩行障害、脱力などはありません。たたくと気持ちいい、安静でよくなる場合です。

 重い腰痛の見分け方は、下肢症状のあるもの、脚がしびれる、脱力がある、坐骨神経痛がある、夜間に増強するもの。明け方5時ごろから痛いのは尿管結石や腫瘍が疑られます。たたくと痛い、歩行障害、1か月たってもよくならない場合は、要注意です。

 一般的な非特異的腰痛は、腰を冷やさないほうがいい。ゆっくり腰でも動けるようであれば、暖めたほうがいい。入浴などで暖める。同じ姿勢を長く取らない。ドライブでは適当な休息を取る。中腰の姿勢は避け、運動前のウオーミングアップと終わった後のクーリングダウンは必要です。(続く)

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