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骨の病気 ―― 予防 ・ 診断 ・ 治療の最前線

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(2) 講演 「変形性膝関節症」 いつまでも歩ける膝を

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講演者 : 齋藤 知行 氏(横浜市立大学 整形外科教授)

 1979年 横浜市立大学医学部卒業。 フィンランドHelsinki大学、米国Case WesternReserve大学 留学後横浜市立大学整形外科 講師 助教授を経て、2002年より現職。

 

齋藤 知行 氏

 日本は超高齢化社会となり変形性膝関節症は、頻度の高い病気になりました。歩行能力の保持は健康寿命を延伸させるためにも必要です。下肢の障害の中で一番多いのは膝です。お年寄りの膝の問題には、痛風、糖尿病等による関節炎や関節リウマチなど、さまざまな病気があります。

 一番多いのは変形性膝関節症です。東大の報告によると、変形性膝関節症は、2,530万人で、女性が3分の2弱を占めています。40歳代の後半から徐々に発生し、60歳代の後半にピークがあります。その約3分の1の方が膝の痛み、腫れを訴えています。膝痛に悩まれている方たちが多い現状です。

 変形性膝関節症は単一の原因でなるわけではありません。が、いずれにしても軟骨が劣化し、さらに軟骨の下にある骨が悪くなり、膝関節が痛み、可動域が悪くなり、大きな日常生活の制限をきたします。

 変形性膝関節症の特徴の1つとして、進行して変形が強くなると、体重をかけた時に膝関節が外側に動く現象があります。「側方動揺」といいますが、膝が大変不安定な状況にあることを意味します。この状況になると、薬や装具療法の効果はなくなり、手術が一般的です。

 患者さんには、疲労感、不安感、なんとなく体がだるい、仲間と一緒にどこにも行けないために苛立ちます。孤立感や、悲壮感などの感情が出てくることがあり、しっかり治療することが必要です。

 保存療法は、発生の予防、初期治療から進行させないという役割があります。体全体に関して減量や生活指導で、膝にかかる負担を減らします。膝関節に対しては、大腿四頭筋訓練が重要な治療となります。

 さらに装具療法や、症状の軽減に膝を温めたりします。関節に水がたまっている場合は、ステロイドの関節内注入、水腫がおさまって痛みがある場合は、ヒアルロン酸の関節内投与を行います。

 痛み止め薬も重要です。最近は軽い麻薬のようなオピオイド薬の投与もできるようになりました。サプリメントを愛用されている方も多いと思います。

 外科的治療法は、関節を温存するか、人工関節に換えるかの2つになります。温存手術は、関節の中に炎症を起こす、あるいは痛みを感じるものを取り、膝関節の変形を治すのが骨切り手術です。人工関節手術には、部分的に換えるものと、全部置換するものがあります。

 最近は人工関節の材質、デザインも改善され、150度の屈曲が可能な人工関節も導入されています。かつては90度ぐらいしか曲がらなかった膝が、新しい人工関節で大きく曲がるようになりました。こういった治療も、今は年間約6万件行っています。

 骨切り術の一番の利点は患者さんご自身の関節が残るので、運動される方に向いていますが、骨を切って付ける過程が必要で、入院期間が若干延びることが弱点となります。

 人工関節は膝が人工物に置換されるので問題もありますが、痛みがよくとれ、すぐに歩けるようになることが大きな利点です。最近では一生、再手術しない状況でもあります。

 いつまでも移動能力を保つことは、自身の生活ばかりではなく、社会に参画でき、仲間と運動することができます。年齢別のスポーツ時間を見みますと、60歳以上の方々は40~50歳代に比べて右肩上がりに、スポーツに参画する方が増えています。(続く)

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