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からだコラム

[がんの診察室]効果と副作用 てんびんに

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 「いいこともよくないことも隠さず教えてもらって、先生と一緒に選んだ治療だから、安心して受けられるんです」

 抗がん剤治療と緩和ケアを受けながら、がんと向き合う男性Cさん(78)は、私にこう言ってくれます。

 Cさんが進行した肺がんと診断され、私の診察室にやってきたのは5年前。5か月間の抗がん剤治療で病状は落ち着いていましたが、2年後に胸水がたまり始め、骨転移も見つかりました。

 改めて抗がん剤を検討し、Cさんは新しい種類の飲み薬を選びました。

 がん細胞を狙い撃つ分子標的薬の一種で、効果が期待される一方、肺に重篤な副作用が起きる危険性があります。

 この薬と同種の別の薬で、死亡例が相次いだことが大きく報じられたことから、Cさんは当初、この薬に怖いイメージを抱いていました。

 確かに副作用で命を落としてしまう可能性もあるわけですが、その確率は他の抗がん剤と同じ程度です。副作用だけを気にするのではなく、期待される効果(いいこと)と、起こりうる副作用(よくないこと)をてんびんにかけて、そのバランスを慎重に判断することが重要です。

 「がんとうまく長くつきあう」という治療目標を確認し、じっくり話し合った結果、この薬を試すことになりました。「いいこと」が「よくないこと」を上回ると判断したわけです。

 幸い、重篤な副作用が起きることはなく、1年以上病気の勢いを抑えることができました。

 「たとえ効かなくても納得できたと思います。私を本当に支えているのは薬ではなく、先生との信頼関係ですから」

 そんな言葉も聞くことができました。(虎の門病院臨床腫瘍科部長、高野利実)

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