日野原重明の100歳からの人生
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天皇陛下が受けられる心臓バイパス手術とは?
去る2月11日、天皇陛下が心臓の精密検診を東京大学付属病院で受けられた結果、冠動脈の2本に血管狭窄が証明された。そこでバイパス(側道)を作る手術を行うという方針が発表されたばかりである。この手術は、術者の技能が高ければ安全に行われるものである。
冠動脈の閉塞、起こる理由は…
なぜある人にそのような冠動脈の閉塞に近い状態が起こるのか。冠動脈の動脈内腔に粥状動脈硬化病変(プラークと呼ぶ)が起こると、粥腫が破れて、そこで大きな血栓が生じ、その部の冠動脈が閉塞に近い状態になり、その末梢の心筋への血行が遮断され、心筋の壊死(心筋梗塞)が起こると、重い心不全から心停止までが起こる。
このようなハプニングを生じる危険のある冠動脈疾患があるとわかれば、このバイパスを作る手術を早めに行うことが安全なのである。
狭心症というのは、冠動脈の一部に内腔の狭窄がある人が階段を上ったり、重いカバンを持って坂を上ったりすると、心筋の虚血が起こり、前胸部痛を起こす。これにはニトログリセリンという錠剤を舌下に入れると口腔粘膜から血行に入り、1分後には胸痛が消失するのである。
このような安定した狭心症は死亡の危険はないが、不安定狭心症といって特異な心電図の変化を示す狭心症がある。これには心臓カテーテルで冠動脈狭窄部へ網状のステントというカテーテルを挿入する技法(PTCA)で治療しておけば心筋梗塞を予防できるのである。
バイパス手術か、ステント治療か…心臓専門医と外科医で決定
バイパス手術を行うか、静脈内カテーテルでステントによるPTCAを行うかは心臓専門内科医と外科医の協議で決定すべきものである。
ちなみに聖路加国際病院の2012年1月の救急部のデータでは、1日平均119名の患者が来院(救急車で搬送されたもの22名)しているが、そのうち心筋梗塞を含む循環器疾患患者は39名であった。来院者の3割強が循環器疾患によるものであった。
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