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(7)平均賃金の50%確保

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  年金の給付水準は、将来どこまで下がるのですか。

モデル世帯 将来の給付水準は

 年金の給付水準は今後、徐々に引き下げられていきます。少子高齢化による年金財政の悪化に対応したもので、2004年の年金改正で決まりました。

 給付水準は、その時点の現役世代の手取り賃金(賞与含む)に対して何%になるかで示されます。「所得代替率」と言って、年金の実質的な価値を表す指標です。

 給付水準を継続的に測る物差しとして、厚生労働省は「モデル世帯」の65歳時点の所得代替率を用いています。平均的な賃金(年収560万円)で40年間働いた男性サラリーマンと、その間ずっと専業主婦だった同い年の妻という夫婦の世帯です。

 厚労省の試算では、モデル世帯の65歳時点の所得代替率は、2009年度の62・3%が、2038年度には50・1%に下がる見込みです。09年度は年金額が月22・3万円、現役男性の平均手取り賃金が月35・8万円ですが、38年度には年金額35・9万円、賃金71・6万円になります。年金は将来的に現役世代の賃金の半分程度になるわけです。

 給付水準の引き下げには、「マクロ経済スライド」という方式を用います。新たに受給し始める人の年金額は、現役の賃金上昇に応じて毎年引き上げられますが、増額幅を本来より小さくするのです。38年度まで続ける予定です。

 想定より少子高齢化が進んだり、経済情勢が悪化したりすれば、最終的な給付水準はさらに下がります。しかし、際限なく下がるようでは国民の不安が募るので、政府は将来もモデル世帯の所得代替率を50%以上にすると約束しました。5年ごとに再計算して、50%を下回る恐れがないかチェックします。

 ただし、50%以上というのはモデル世帯に限った話です。共働きや単身者など世帯タイプが異なったり、賃金水準が高かったりすれば、同じタイプの現役と比べた所得代替率はもっと低くなります。自分の現役時代の賃金の50%と思っている人もいますが、そうではありません。

 この試算は、マクロ経済スライドが12年度に始まる前提ですが、デフレ経済のときは停止する決まりで、先送りが確実。年金財政はより悪化しています。給付水準の低下を最小限に抑えるために、少子化対策と経済対策に真剣に取り組む必要があります。(林真奈美)

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