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石井苗子の健康術

yomiDr.記事アーカイブ

絵を描くエネルギー

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(彫刻家、画家、指揮者の皆さんはなぜ元気なのでしょう)


 聖路加看護大学の実習時代に、86歳の彫刻家の男性を担当したことがあります。ベッドの脇に中年の女性が立っていらしたので「お嬢様ですか」と声をかけた直後に「しまった!」と思いました。そんな事お聞きするのは非常識です。ところが凛とした声で、「わたくし妻です」とのお返事。「大変、失礼を申し上げました」と頭を下げると、「いいえ、いつも聞かれますから、いいんです、それより主人の事なんですが、すぐ体重を尋ねますがセクハラと思わないでくださいね。太っている女性が好きなんです」には、私の方がビックリでした。

 有名な彫刻家でいらしたのですが、何度ご注意申し上げても、ベッドから車椅子に移動する際に私の胸に頭をうずめる癖があり、最後にはもう面倒になってしまい、そのままの格好でいてもらうことにしていました。

 彫刻家、画家、そして指揮者には、エネルギッシュな方が多い。どうしてなのかと思うのですが、そのひとつに、ご本人が自分の感性を肯定して生きていることがあるのではないでしょうか。

 長生きをされている方は、その感性を認めてもらえる環境を上手につかんで生きていらっしゃる。そんな気がします。

 先日、画家の入江一子さんの作品を拝見しました。ご本人が95歳、祝福にかけつけた聖路加の日野原重明先生が100歳。冒頭のごあいさつは「あ~、私の方が若干お兄さんかな?」で始まりました。エネルギッシュな現役のお二人の雰囲気があふれていました。

 入江一子さんの作品のほとんどは明るい色彩です。でも1953年に独立賞を受賞された「魚」は、黒と茶色が基調の暗いものでした。

 小学校の夏休みに1日1枚の絵を描き続けて学校に提出したこともあったという、絵を描くことがなによりも好きだった女の子の成長過程で、「魚」を描くことが壁を1枚打ち破ることになったとエッセイにあります。

 その苦しい過程で画家の林武さんからアドバイスをもらいます。「人の手助けや運不運では実力がない」。「1年や2年の差より、一生の問題の方がどんなに大切かを思い、この運命をよりよく生かして下さい」と。まさしく、感性を信じて生き続けなさいと言っているように思えます。

 この文章を読んで、最近の自分をなげかわしく思いました。何かうまくいかないと運が悪いとか、人の手助けが足りないとか、そんな事ばかり言っています。エネルギーが足りないと感じる事が多くなったのは、いかに愚痴ばかり言っているかだと、反省しました。

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石井苗子さん顔87

石井苗子(いしい・みつこ)

誕生日: 1954年2月25日

出身地: 東京都

職業:女優・ヘルスケアカウンセラー

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2件 のコメント

意欲

梅の季節

ある棋士の方が若い時から頭角を現し活躍されたのですが破天荒な生き方をされたそうです。一芸に秀でた人が全てではありませんが、感性が豊か(鋭敏)な方...

ある棋士の方が若い時から頭角を現し活躍されたのですが破天荒な生き方をされたそうです。
一芸に秀でた人が全てではありませんが、感性が豊か(鋭敏)な方は反面そういう側面も持っておられる人もいるのでしょう。
もう約6~7年前に亡くなられましたが、奥様が述懐されておられました。
男は、女、酒、ギャンブルで身を持ち崩す、と言われます。奈落の底に落ちて立ち直れない、といわれていますが内助の功で克服された。現代の感覚では即離婚と考えるのが常ですが昔の人は辛抱強い。でも心の底では愛(尊敬)していたのだと思います。病床でご子息の前で「かーちゃんが好きだから」本人には言えないので間接的に息子さんに言った。愛情表現って様々ですね、それから間もなくして永眠されたそうです。

感性は皆持っていますが、突出した才能が永続的に続く人は稀でしょう。試行錯誤しその変遷を経て自分というものをみいだせる。鏡の中の自分が化粧をしている内は自分ではない、と言った方がいます。

文壇で芥川賞、直木賞、つい先日新聞で読みましたが作家の登竜門で、その賞を得ることは文壇での一歩に足を踏み入れたということですが継続して良い作品が書けるか?といえば疑問です。それは読者が判断することで、つまらなければ依頼が来ない。
頑なに、全てではないかもしれないが賞を固辞した作家がいました。私はその作家の人がどういう理由で固辞したのかしりません。若いときは読み耽っていました。山本周五郎という作家です。



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日本全体が、そうですね

Naka

 仰るように、芸術家の方や、研究者の方、日野原先生もエネルギッシュですね。この方々は、自分の人生で何をしたいかはっきりしておられ、それが情熱とし...

 仰るように、芸術家の方や、研究者の方、日野原先生もエネルギッシュですね。この方々は、自分の人生で何をしたいかはっきりしておられ、それが情熱として溢れ出ている、それが仰るところの感性ではないかと私には思えます。
 父は画家でしたし、身近な研究者の方にも、こうしたエネルギーを感じる方は多く、それは、人生は過ごすためにあるのではなく、自分で何かを社会に遺していく、或いは、造り続けることが自分の人生であると確信していらっしゃると思います。
 言うまでもなく画家の人生は苦難に満ち、画材と食料を手に入れるだけでも苦労の連続という方も少なくありませんが、対照的に画面には絵を描ける喜びが溢れている…そんな作品を眼にすることも多いと思います。
 私たちも、折角こんなに恵まれた時代-少なくとも食べるものも薬もあり、ここは戦場ではない-に生まれたのですから、不満や不幸を嘆くよりは、僅かでも、誰かのために何かをしていくことに情熱と喜びを持って生きたいと思いました。

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