文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

海原純子のハート通信

yomiDr.記事アーカイブ

友人や仲間が多いと風邪も逃げ出す?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
 
海原純子撮影

 このところ風邪をひいている方が多いですね。そこで今週は風邪と社会的ネットワークについての研究をご紹介しましょう。

 以前、社会的ネットワークの多い人ほど、心臓病発作の予後が良いという研究をご紹介しました。情報的支援を受けていることが病気の予後を左右する大切な要素というわけです。それでは風邪はどうなのだろう、という研究を行った学者がいます。

 ピッツバーグ大学のコーエン博士は、ボランティアたちを少量の風邪ウイルスに曝露(ばくろ)させた結果について発表しています。慎重に行われた、このちょっと驚くような実験の目的は、「風邪に対する抵抗力をアップさせる要因は何か」というものです。

 200名を超える健康な、風邪をひいていないボランティアが、鼻から少量の風邪のウイルスを吸い込んだ後、鼻水の量を毎日測定されました。そのほか、くしゃみやせきなど、風邪の症状が現れるかどうかを経過観察されました。

 5か月後には99%のボランティアが風邪ウイルスに感染していることが判明したものの(鼻汁からウイルスが検出された)、症状が現れたのは半数の人だけでした。風邪を悪化させる因子は、喫煙や睡眠不足などでしたが、注目すべきは、仲間や友人との接触が多いほど風邪の症状を起こしにくい、ことが判明したのです。

 社会的ネットワークは、どうやら、免疫力アップにつながり、このことが風邪の罹患(りかん)率を低下させたと推測できたということです。インフルエンザの場合は、こうはいかないでしょうが、いわゆる「風邪」の場合、社会的なかかわり、人とのコミュニティーは免疫力アップにつながる、というわけです。とすると、普段から、友人関係を充実させたり、家族関係を良くしたりしておくと、免疫力アップにつながるといえそうです。

 

 ちょっと風邪気味かなあ、と思う時、ライブを聞きに行き、友人と話をし、人ごみの中で大丈夫かなと思ったけれど、意外にその後、元気になったなどという経験を思い出しました。いい気分で過ごすと免疫力アップ。イライラしたり落ち込んだりしていると免疫力低下。免疫を担うNK細胞がかかわっているのでしょうね。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

海原純子ブログ_顔87

海原 純子(うみはら じゅんこ)

1976年東京慈恵会医科大学卒業。日本医科大学特任教授。医学博士。2008-2010年、ハーバード大学及びDana-Farber研究所・客員研究員。現在はハーバード大学ヘルスコミュニケーション研究室と連携をとりながら研究活動を行っている。

海原純子のハート通信の一覧を見る

2件 のコメント

心の健康も大切なのですね。

みんみん

心と体は切り離すことができないのですね。人とのつながりを避けるより人とかかわることで自分を解放できるようになれたらな、と思います。人と共感できる...

心と体は切り離すことができないのですね。人とのつながりを避けるより人とかかわることで自分を解放できるようになれたらな、と思います。人と共感できることが第一ですね。そういえば今年はまだ風邪をひいていません、きっと家族や友人に囲まれて幸せだからかもしれません。

つづきを読む

違反報告

解釈が誤っている

Kitty

 「仲間や友人との接触が多いほど」過去に類似の風邪に感染しており、免疫を獲得していて発病しにくいと言うことだけのこと。

 「仲間や友人との接触が多いほど」過去に類似の風邪に感染しており、免疫を獲得していて発病しにくいと言うことだけのこと。

違反報告

すべてのコメントを読む

最新記事