宋美玄のママライフ実況中継
医療・健康・介護のコラム
恐るべき母乳スパルタ病院
元旦早々に出産したという先週の記事に、おめでとうのコメントをくださった方々、ありがとうございました! 特に、かつて出産を担当させてもらったお母さんたちにおめでとうと言っていただけるなんて、産科医というのは幸せな職業だなあと思いました。先週の記事を読み直してみると、大分、日本語が変ですねえ。「まさに実況中継」ということにしておいてください。
ところで、今まで「マタニティ実況中継」というタイトルでブログを書いてきましたが、妊娠が終了したので「ママライフ実況中継」に変更したいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
「ママライフ」の始まり
さて、「本当は経産婦だったのでは?」と面会に来てくれた医局の人たちにネタにされるほど安産だった私ですが、それでめでたしめでたし、ではなかったのです。出産は大きな関門ですが、終わりではなく区切りでしかありません。出産であちこち傷んだ体で育児が始まります。高齢出産だからということもあるかも知れませんが、安産だったとはいえ、骨盤が緩んで足腰が痛むし、産道の傷は痛むし、上体を起こすとふらふらするし、満身創痍でした。
産院によりますが、出産当日は疲れを取るために赤ちゃんを預かって、お母さんをゆっくり休ませてあげるところが多いと思います。少なくとも私が今まで働いたことのある病院はそういった方針でした。
ところが、私が出産した病院は、母乳育児の早期確立が何よりも優先される「母乳スパルタホスピタル」だったのです。(以前その病院に勤めていた時は今のような方針ではなかったのですが、知らぬ間に変貌していました・・。)
3時間毎に授乳、でも母乳が…
出産直後からスパルタ教育ははじまりました。カンガルーケアで授乳した後、出産当日から母児同室で3時間毎に授乳するという方針だったのです。
母児同室に関しては、体中が痛くて、横になった姿勢から起き上がるだけでもやっとで、寝返りにも時間がかかるという状態だったので、赤ちゃんと二人きりにされても赤ちゃんの状態まで把握する自信がなく、授乳と授乳の間は預かってもらえました。でも、3時間に一度の授乳は絶対にさせられ、ゆっくり眠ることは産後一度もかないませんでした。(現在に至るまでです・・・。)
しかも大部屋なので、誰かの赤ちゃんが泣けば全員起きるという。
赤ちゃんの体重減少
授乳といっても、初産なのに初日から母乳が出るはずはありません。赤ちゃんに吸ってもらうことで少しでも母乳が早く出るように、頻回に授乳をするようにということなのですが、赤ちゃんからすれば絶飲食状態です。母乳が満足に出るまでの間は粉ミルクか糖液を赤ちゃんに飲ませてくれる産院が多いのですが、何も与えてくれません。
お腹が減って赤ちゃんは昼も夜も頻繁に泣き続け、かわいそうに体重がどんどん減ってしまい、私はほとんど眠れませんでした。
赤ちゃんはみな、生理的体重減少といって生後3~4日間で出生時より体重が減ります。出生体重の10%くらいまでが正常範囲とされています。私の赤ちゃんは出生3日目に10%体重が減少し、ボーダーラインになってしまいましたが、やはりミルクも糖水も与えてくれません。
確かに、よく引用されるWHOの「母乳育児を成功させるための10か条」に「医学的に必要がないのに母乳以外のもの、水分、糖水、人工乳を与えないこと」とあります。でも、10%も減っていれば「医学的に必要」だと思うのです。ちなみに、退院してから助産学校の教科書を2冊、見直してみましたが、体重が7%減少すればミルクなどを足すべしと書いてありました。
結局、翌日に11%減少した時点でミルクを足す許可が出て、赤ちゃんはそれなりに眠ってくれるようになり、私も少しは睡眠が取れるようになりました。
そして、初産婦として平均的なことに、ようやく母乳が出始めてくれました。翌日から体重は増加に転じました。
母乳育児支援は助産婦さんに
ちなみに、産婦人科医は妊娠・出産は専門ですが、母乳育児支援については助産師にお任せというのが多数派だと思います。私も今までいくつかの病院に勤務しましたが、母乳についての方針はいろいろあるんだなあと、半歩離れて見ている状態でした。私が出産した病院では、母乳については新生児科と助産師が担当していて、産婦人科医は口を出していないようでした。助産師もみなが同じ考えという訳ではないようでしたが。
私の場合は、いろんな方針の病院があることを知っていたので、「ああ、ここは母乳スパルタ病院なんだな。従うしかあるまい」と思っていました。だから、体力は消耗したものの、「私は母親としてやっていけるだろうか」などと育児不安に陥ることはなかったのですが、うまく母乳の出ない一般のお母さんは、3日目くらいから精神的に追い詰められて、しくしく泣き始めるのだそうです。出産で体にダメージを受けた上に、連日の睡眠不足が重なれば、精神も弱りやすくなって当然ですよね。
たくさんのお母さんたちを見てきましたが、母乳の出始める時期や量には大きな個人差があり、全く出ない人もいます。ましてや全員が完全母乳にできるわけではありません。ただでさえ育児は大変なものなので、さらにハードルを上げるというのはどうなのかなあと思いました。もちろん、赤ちゃんのことを考えてのことなのでしょうけど。
産後5日目に退院
高齢出産でボロボロになった後、慣れない授乳に悪戦苦闘し、非常に長く感じられた入院生活でしたが、母児ともに健康な状態で産後5日目に退院しました。自宅からは遠かったけれど、人手不足のこのご時世に贅沢な体制が整っていて、見知ったスタッフが多くいる古巣の病院で大事な時期をすごすことができて、本当に恵まれていたと思います。
せっかくスパルタに耐えたので頑張って母乳を与えつつ、足りなければミルクも足して、赤ちゃんがすくすく育つように試行錯誤していこうと思います。
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許せないです
りんご
完全母乳の病院で、 赤ちゃんがなくなったり、 後に、後遺症で 苦しんでいる赤ちゃんが、いるのをご存知ですか? 行きすぎた、リスク管理のきちんとで...
完全母乳の病院で、
赤ちゃんがなくなったり、 後に、後遺症で
苦しんでいる赤ちゃんが、いるのをご存知ですか?
行きすぎた、リスク管理のきちんとできない
完全母乳は危険です。
被害にあわれて苦しんでいる赤ちゃんと、お母さんがいるんですよ。
自分は、赤ちゃんに優しい病院では、産んでないし、
自分の子供は被害にあっていませんが、
私は、こういう病院許せないです。
病院は、リスク管理がきちんとできない状態で、
完全母乳を押しつけたらいけない。
管理がきちんとできていなくて、
赤ちゃんが死亡したり、脳に障害をおうケースがでるような産院は、
「赤ちゃんに優しい病院」の認定取り消して欲しい。
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赤ちゃんダメでした
小林
赤ちゃんに優しいなんてとんでもないです。私は術後で動けないまま赤ちゃんと一緒にされて、そのまま赤ちゃんが呼吸困難になったのに気づかず寝ていたんで...
赤ちゃんに優しいなんてとんでもないです。
私は術後で動けないまま赤ちゃんと一緒にされて、そのまま赤ちゃんが呼吸困難になったのに気づかず寝ていたんです…
更に、助産師を呼んでからも、緊急蘇生がされて転院になったのですが病院の対応はとてもスムーズに、赤ちゃんは急変することはよくあるからね〜、寝ちゃったんだね〜、きっと大丈夫だからね〜、と言われて搬送されてく赤ちゃんを見送るしかなかったんです…赤ちゃんはもうダメでした。
BFHはこんな病院なのに、うちの県ではまだBFHが増えています。周りにもいます。
なぜこんな病院が増えているんですか?今まで安心だと思っていた病院までがBFHになろうとしています。急変がよくあることなら、病院もちゃんと看ていないとだめでしょ?これじゃ病院は何のためにあって、入院費は何のために払っているのか。赤ちゃん返して、赤ちゃん返して、赤ちゃん返して。
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母乳スパルタ病院に思うこと
kame
こちらの記事を、大変共感しながら、拝読しました。長女を「母乳スパルタ病院」で出産しました。3日3晩完徹で陣痛を耐え、4時間半いきみ続けた後の吸引...
こちらの記事を、大変共感しながら、拝読しました。
長女を「母乳スパルタ病院」で出産しました。
3日3晩完徹で陣痛を耐え、4時間半いきみ続けた後の吸引分娩で、明け方出産、直後から母子同室はもちろん、その日から1日10回以上の授乳を指示され、4日ぶりに1時間半の睡眠を得るのがやっと。狂気の沙汰でした。
また、わが子も丸3日間、糖水等を補給されることなく泣き通し、完全に心身参りました。
出産の疲れを引きずりこんだまま退院し、その他の要因もあるものの、産後うつになり、地獄の日々を送りました。薬服用のため、母乳は1ヶ月で断念し、ミルクで育てました。
9か月で産後うつを完治後、次女を妊娠し、今度は「母体の休養を第一に優先する」病院で出産しました。安産でしたが、当日はゆっくり休むよう言われ、授乳は翌日の午後からでした。眠れなければ、睡眠薬が処方されました。
1日目から、不足はミルクで補われ、子どもは空腹で泣き続けることもなく、夜中は預かってくれ、入院中にお産の疲れを解消でき、元気で退院できました。
皮肉なことに、母乳がたっぷり出て、母乳オンリーで育てられる状況になりました。
「恐るべき」は、完全母乳主義そのものより、その盲目的なありかた、柔軟性の無い強要だと思います。長女を出産した病院は、先日、WHOや厚労省の推奨する「赤ちゃんにやさしい病院」に認定されたそうですが、「完全母乳率の成績アップ」を図る病院の陰で、自殺や虐待寸前で苦しむ母親がいることも、忘れないでほしい。また、産む側も授乳について事前にしっかり知っておくことが必要かと思います。
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