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ドクター柴原の漢方塾

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冷え症は症状なの?(1)

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 人の感覚は十人十色で、おいしかったからと友人に薦められて行ったレストランで、その友人の味覚を疑ってしまったという経験をされた方もいるのではないでしょうか。気温に対する感覚も同じで、隣に座っているのに、一人は上着を脱ぎ、もう一人はコートを着ようかと迷っているということもあるのではないでしょうか。

 このように、他の人は冷たさを感じないような温度にもかかわらず、体全体、あるいは手足や腰などが冷たく感じる状態を「冷え症」と呼んでいます。冷えは秋から冬になると多くなる症状で、最近では冷房の関係もあって夏に冷えを自覚する方もいます。

 また、足が冷えて眠れない、手が冷たいので握手をするのも嫌がられる、腰が冷えるのでカイロを使っている、体全体が冷えるので部屋の中でも厚着していたいなど、冷えを感じる場所やその程度は様々です。これを読んでいる人の中にも、「そう言われれば、自分も足が冷たい」「夜は靴下をはかないと眠れない」、あるいは「冬にはカイロは手放せない」と思っている人がいるのではないでしょうか。

 冷え症という言葉を国語辞典で引くと、「冷え性:冷えやすい体質。特に、腰から下が冷えること。女性に多い。」と記されています。冷えや冷え症という言葉は、一般には広く受けいれられています。しかし、西洋医学では冷えという症状を重視しません。膠原病(こうげんびょう)や更年期症候群などでは冷えを症状としてとらえていますが、冷えそのものを治療の対象とすることはありませんし、治療薬もありません。

 では、漢方医学ではどうでしょうか。

 漢方医学の古典には、手足厥寒(けっかん)や腰中冷(ようちゃくれい)、厥冷(けつれい)、厥逆(けつぎゃく)、腹中寒気など、二十に余る「冷え」に関する言葉が記されています。つまりこれは、漢方医学では非常に古くから冷え症を治療の対象ととらえていたことを示しています。国語辞典の引用として「冷え性」という言葉を使いました。国語辞典には冷え性と冷え症が併記されていて、冷え性の方が一般的なようです。しかし、漢方医学では冷えを治療対象として、あるいは治療薬選択の上での非常に重要な症状と考えていますので、冷え症という字が用いられているのです。

 冷え症は、冷えるという症状そのものが生活の幅を狭くしますし、冷えることから生じる痛みや不眠などを考えると、明らかに生活の質を損なっていると思われます。冷え症は改善すべき症状であり、改善可能な症状であると認識すべきなのです。次回は、冷え症の改善方法についてです。

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漢方ブログ_柴原87

柴原 直利 (しばはら・なおとし)

医学博士。1960年生まれ。大阪府茨木市出身

富山大学和漢医薬学総合研究所漢方診断学分野 教授

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