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ドクター柴原の漢方塾

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「めまい」 の原因と漢方薬

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 今回のテーマは「めまい」です。めまいという言葉は外来診療でも頻繁に聞かれる症状です。一口にめまいと表現されますが、実際には、横になって安静にしているのに床や天井がグルグルと回った、立ち上がった時にクラッとした、朝礼で急に倒れた、歩いている時にグラッとした、体がフワフワと宙に浮いた感じがしたなど、めまいという言葉には様々な内容のものが含まれています。

 天井が回るようなめまいは前庭神経や三半規管などの異常でよくみられる症状で、難聴や耳鳴りがみられることもあります。立ち上がった時や朝礼で生じるめまい、あるいは「貧血を起こして倒れた」と表現されるめまいの多くは「起立性めまい」と呼ばれるもので、脳へ充分な血液を送るだけの血圧を維持できない場合にみられます。

 「貧血を起こした」の貧血は医学的な意味での貧血ではありませんが、鉄不足などによる医学的な貧血も、めまいの原因になります。また、歩行時のめまいは「浮動性めまい」と呼ばれ、脳幹や小脳の異常、あるいは高血圧などの際によくみられる症状です。めまいを感じた時には、まずは医療機関を受診する必要があります。

 めまいの原因が特定された場合には適切な治療により改善することも多く、西洋薬に漢方薬が併用されることもあります。

原因不明の「めまい」には・・・・・・

 その一方で、めまいを感じているのに、原因がみあたらないこともあります。このような場合には漢方薬が頻用されます。漢方医学では気血水の一つである水(すい)が偏在した状態、つまり、本来は水のたまらない場所に水がたまった、あるいは水のあるべき場所から水がなくなった状態を水毒(=水滞)と呼んでいます。めまいは、この水毒の重要な症状です。

 水毒では、めまい以外にも,身体が重い、ズキズキとした拍動性の頭痛、頭が重い、車酔いしやすい、むくみや手のこわばり、尿の異常などの症状もみられます。

 めまいに対して用いられる漢方薬には,沢瀉湯(たくしゃとう)や真武湯(しんぶとう)、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)などがあります。特に「回転性めまい」には沢瀉湯、「浮動性めまい」には真武湯、「起立性めまい」には苓桂朮甘湯がよく用いられ、効果をあげています。

 めまいに頻用される漢方薬を構成する生薬の中心となるのが、「利水薬」と呼ばれるもので、沢瀉(たくしゃ)や茯苓(ぶくりょう)、朮(じゅつ)、猪苓(ちょれい)などがあります。

 これらの生薬は水の偏在を調整するので、時には尿量が増えることもあります。しかし、利尿薬ではありませんので、時には尿量が減ることもあります。

 漢方薬は、その漢方薬の適した病態の方には有効ですが、異なっているとまったく効きませんので、自分には効いたからといって、友人に薦めるのはやめるべきです。

めまいの治療に用いられる漢方薬
沢瀉湯(たくしゃとう)
真武湯(しんぶとう)
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
【参考:漢方薬に関する詳細は、QLife漢方(キューライフ)へ】
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漢方ブログ_柴原87

柴原 直利 (しばはら・なおとし)

医学博士。1960年生まれ。大阪府茨木市出身

富山大学和漢医薬学総合研究所漢方診断学分野 教授

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