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がん医療フォーラム2011

イベント・フォーラム

第1部・専門医(1)がん治療の最前線を報告

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 がん治療や患者支援を話し合う「がん医療フォーラム2011」が11月10日、東京都千代田区の大手町サンケイプラザで開かれた。第1部ではがん専門医4人が治療の最前線を報告、第2部では患者団体代表や相談支援担当医らが医療側と患者側のコミュニケーションをテーマに話し合った。

 主催 公益財団法人正力厚生会
 共催 国立がん研究センター、がん研究会有明病院
 後援 読売新聞社、厚生労働省
 協賛 中外製薬株式会社

技術進み副作用軽減…伊藤芳紀さん

いとう・よしのり 1995年、広島大医学部卒。専門は放射線治療。

 放射線治療は、コンピューター技術や機器の進歩などにより、がんを治す効果は落とさず、副作用を減らせるようになりました。

 代表的なのは、様々な方向から放射線をあてる強度変調放射線治療(IMRT)と定位放射線治療(ピンポイント照射)です。がんを狙いうちし、正常な組織にあたる放射線量が減り、副作用が軽減されます。

 たとえば、従来の頭(けい)部がん治療では、正常な唾液腺にも相当の線量があたるので、がんは治っても、唾液が出なくなって、一生喉が渇いた状態になることがよくありました。IMRTでは、その頻度が、かなり減りました。

 また、肺など呼吸によって動く臓器は、治療中もがんが動くため、照射範囲をある程度広く取る必要がありました。今では、コンピューター断層撮影法(CT)などで得られる豊富な画像情報から、がんの動きを把握して、範囲を絞った最適な照射が可能になりました。

 がんの根治を目指す、体に優しい放射線治療は、さらに進化するでしょう。

臨床試験 体制を強化…大津敦さん

おおつ・あつし 1983年、東北大医学部卒。専門は消化器内視鏡・消化器腫瘍内科。

 消化器がんでは、手術に抗がん剤治療を加えることで、治癒率が高まります。新薬の開発が盛んですが、主役は分子標的薬です。アバスチン(一般名ベバシズマブ)などすでに10種類の薬があります。

 これまでは、日本に新薬が入ってくるのが遅いという問題がありました。試験管や動物を使った基礎研究のレベルは高くても、人間での有効性や安全性を確かめる臨床試験の体制に問題があったからです。臨床試験は3段階あり、特に第1段階の体制が弱く、国立がん研究センターを中心に、体制強化を進めています。

 国立がん研究センター東病院では2009年、10年の2年間に第1段階の臨床試験を23種類の薬で行いました。このうち世界で初めて人に投与する試験が五つありました。国内の患者にいち早く新薬を届けるには、世界に先駆けた試験を行う必要があります。

 試験と同時に、がんを起こす様々な遺伝子異常の解明にも力を入れ、一人ひとりに最適な薬が提供できるよう努めています。

◇ ◇ ◇

関連リンク

 ・「がん医療フォーラム2011」の解説動画はこちら
 ・正力厚生会のホームページはこちら

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