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ドクター柴原の漢方塾

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肩こりは漢方薬で

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 長時間同じ姿勢を続けていると、首や肩の筋肉が痛くなることがあります。今、これを読んでいる人の中にも、肩や首、あるいは肩甲骨のところが重苦しいとか痛いと感じている人もいるのではないでしょうか。これがいわゆる「肩こり」です。中にはひどい肩こりのために、頭痛や嘔気(おうき)まで感じて日常生活に支障をきたす人もいるようです。

 同じ姿勢をとることなどで筋肉に負担が生じ、負担がかかった筋肉は緊張して硬くなり,その結果として血液の循環障害をきたして、筋肉に痛みや重苦しさを感じるようになります。ストレスが原因のこともある症状で、欧米の人には少なく、日本人では非常に多いと言われています。 

 肩こりには、首や肩のストレッチやマッサージ、あるいは入浴などでの温熱刺激が有効とされていますが、中には鎮痛剤や筋弛緩(しかん)薬の服用を必要とすることもあります。

 一方、漢方薬も有用で、肩こりの治療目的に受診される方もおられます。では、漢方医学では肩こりをどのように考えているのでしょうか。

 漢方医学では、気血水が過不足なく体を巡ることによって、全身の臓器や細胞の恒常性が維持されていて、この巡りが悪くなると様々な症状がみられるようになります。気の巡りが悪くなった状態が以前に「咽喉のつまり」で書いた気鬱(きうつ)という病態です。一方、血の巡りが悪くなった状態は「お血(おけつ)」と呼ばれています。

 肩こりは、このお血や気鬱を原因としていることが多い症状です。お血は、精神的ストレスや運動不足、睡眠不足、過食、便秘などの生活習慣の乱れによって生じるとされていますので、最近は非常に多い病態です。また、瘀血では肩こり以外にも、腰痛や筋肉痛、目の下のクマ、顔のシミ、不眠、冷えのぼせ、手足のほてりなどの症状がみられることがあります。これらの症状を自覚される方は、病気ではありませんが、漢方医学で言うお血の存在が疑われます。

 肩こりの治療に用いられる漢方薬には、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)や加味逍遙散(かみしょうようさん)、四逆散(しぎゃくさん)、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などがあります。特に桂枝茯苓丸はお血に対する治療薬(=駆瘀血剤)の代表的な漢方薬で、桂皮、茯苓、牡丹皮(ぼたんび)、桃仁(とうにん)、芍薬(しゃくやく)という五つの生薬により構成されています。

 この五つの生薬のすべてがお血を改善する作用をもっているわけではなく、この中の牡丹皮と桃仁にお血を改善する作用があります。桂枝茯苓丸は脳梗塞や腎機能障害といった病気の進行を予防するために用いられていますし、お血が微小循環障害と関連するとも指摘されていますので、肩こりは大きな病気へと進む前に現れた警笛とも考えられます。単なる肩こりと考えずに、他にお血の症状はないか、チェックしてみて下さい。

肩こりの治療に用いられる漢方薬
桂枝茯苓丸 (けいしぶくりょうがん)
加味逍遙散 (かみしょうようさん)
四逆散 (しぎゃくさん)
柴胡加竜骨牡蛎湯 (さいこかりゅうこつぼれいとう)
【参考:漢方薬に関する詳細は、QLife漢方(キューライフ)へ】
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漢方ブログ_柴原87

柴原 直利 (しばはら・なおとし)

医学博士。1960年生まれ。大阪府茨木市出身

富山大学和漢医薬学総合研究所漢方診断学分野 教授

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