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対談(1)なぜ、がんになるのか

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 講演に続いて、鈴木さんと米原さんが対談し、食品の安全性などについて意見を交わしました。コーディネーターは、田中秀一・読売新聞東京本社社会保障部長が務めました。

鈴木元(すずき・げん)
 1948年岩手県生まれ。75年東京大学医学部卒業。アメリカ国立衛生研究所に留学、放射線医学総合研究所室長、放射線影響研究所主席研究員、国立保健医療科学院生活環境部長などを経て、2009年から国際医療福祉大学教授。11年から、国際医療福祉大学クリニック院長も務める。
 専門は、免疫学、放射線病理学、放射線疫学。原子力安全委員会防災専門部会ワーキンググループメンバー。1999年に茨城県東海村で起きたJCO臨界事故では、主治医として被曝した患者の治療にあたった。
米原英典(よねはら・ひでのり)
 1953年奈良市生まれ。77年同志社大学工学部卒。滋賀医科大学で自然放射線の研究を始め、放射線医学総合研究所へ転任後、チェルノブイリ事故後の環境放射能研究などに従事。その後、文部科学省原子力安全課で放射線安全企画官として安全基準策定などを担当、放射線医学総合研究所に戻り、規制科学総合研究グループリーダーを務め、今年4月から現職。
 専門は、保健物理学、規制科学。主に、環境放射能による線量や影響の評価、放射線防護や規制に関する研究。日本原子力学会の保健物理・環境科学部会長などを歴任、現在、原子力安全委員会原子炉安全専門審査会審査委員などを務める。
田中秀一(たなか・ひでかず)
 読売新聞東京本社社会保障部長

 田中 最初に、放射線のごく基本的なことをお尋ねしたいと思います。そもそも、放射線を浴びると、なぜ、がんになってしまうのでしょうか。

 鈴木 私たちの体の中には、組織をどんどん再生していく元になる細胞があります。これを、「幹細胞」と言います。

 この細胞は、少しずつ分裂しながら組織をつくっていきます。こういう細胞に、放射線が当たって、遺伝子に傷がつく。その遺伝子の傷が、発がんに関係するような遺伝子であった場合、それが繰り返されていくと、がんになります。

 田中 放射線によって、がん以外の病気になる心配はないのでしょうか。

 鈴木 原爆被爆者の疫学調査などでわかってきていますが、がんになるかどうかという低い線量の範囲では、一つには、白内障が増えます。あるいは、血管の老化が促進されていくということが知られています。そのため、心筋梗塞が早く起きやすくなるとか、全体として老化が促進されるのではないか、と言われています。

 もっと高線量になっていきますと、いろいろ出ますが、それはミリ・シーベルトの1000倍の単位であるシーベルト単位の被曝(ひばく)をしたときの話で、今、話しているようなミリ・シーベルト単位では、白内障とか、血管の老化促進、そういうものが問題になるかと思います。

 田中 今回の福島の原発事故の影響を考える上で、やはり過去、ソ連で起きたチェルノブイリ事故が大変参考になると思います。チェルノブイリで一体どういう健康被害が起きたのか、もう一度まとめていただければと思います。

 米原 現在の公表された情報によりますと、チェルノブイリ事故は原子炉がつぶれて火災が起きましたので、放射性ヨウ素は福島原発事故の約10倍、放射性セシウムは約8倍多く放出されたとされています。特に放射性ヨウ素を吸入したり、牛乳などの食品から体内に取り入れた子どもたちに甲状腺がんが多発し、5000人以上発症しました。ただし、発症した人は治療を受けて、99%の人が生存しています。

 田中 子供の甲状腺がんが増えて、5000人以上ががんになった。でも、それで亡くなった方は、たしか15人程度という数字ですね。

 米原 はい、そうです。

 田中 福島は、チェルノブイリに比べると、放射性物質の量は10分の1ぐらいですが、福島では、将来、どういうことが起きる可能性があると考えたらいいんでしょう。

 鈴木 今回、日本の場合は、かなり早期に避難という措置がとられましたし、食べ物の制限もかなり早期に行われています。そういう意味で、お子さんの甲状腺被曝量は、チェルノブイリなんかに比べると、ずっと低いレベルに抑えられたというのは幸いなことでした。(続く)

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