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講演(2)食べ物の内部被曝を減らす…放医研プログラムリーダー・米原英典さん

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 食べ物による内部被曝(ひばく)を減らすには、水で洗うほか、煮たり、酢漬けにしたりする方法があります。水洗いの場合は、表面に放射性物質がどれだけ付いているかで、落とせる効率が変わってきます。販売されている野菜などは既に、表面に付いている放射性物質がドロと一緒に洗い落とされているものが多いので、購入者がもう一度洗浄しても、放射性物質をさらに減らすことはなかなかできません。そのような場合でも煮沸すると、放射性セシウムが残る割合は10~50%、酢漬けにすると残留率は25%程度になるという研究結果がありますので、より効果的です。

 自家菜園で作物をつくっている方も、たくさんいると思います。放射線量を測定するのが一番いいんですけれども、なかなか測定できない場合は、文部科学省が発表している放射線汚染の状況を示す地図で、自宅の周りがどれぐらい汚染されているかということをまず確認していただきたい。放射線量が少し高いということであれば、カリウムの肥料を多めに入れるという方法が有効です。カリウムとセシウムというのは同じように植物は吸いますので、カリウムをたくさん入れると、その分、セシウムを取り込む量が少なくなるからです。周りに農家があれば、農家の方と同じように、土を掘り返したりすると放射性物質の濃度が低くなります。

 このように線量をできるだけ下げることも重要ですが、食べ物の中の放射性物質を気にし過ぎないということも大事なことです。心配しすぎて、野菜を食べないということになれば、そのほうが健康にはマイナスです。

 放射性カリウムは、鈴木先生のお話にもありましたように、どんな食べ物や牛乳などにも元々含まれています。高い場合は放射性セシウムの暫定規制値と同じ程度の濃度です。母乳にもこのような自然の放射性カリウムは入っているわけですから、母乳から微量の放射性セシウムが出ても、元々放射性物質の濃度がゼロということはないので、あまり気にする必要はありません。我々は人類始まって以来、ずっと放射性カリウムが入っている母乳を子供に飲ませています。それがどれぐらい増えるかということが大事です。

 野菜の摂取量が多いほど、健康リスクが低くなるといわれています。がんの発症を低下させる効果も認められています。心臓病とか、高血圧のリスクを下げるということもあります。

 放射性物質を気にし過ぎて、野菜を避けるということは、かえって健康のリスクを増やす可能性があります。今、入っている放射性物質はほんとうに微量です。そういう微量のものを避けるよりも、いろんな野菜の健康へのプラス効果を考えるほうが、今のところはいいということが考えられます。

 国立がん研究センターによると、喫煙とか、大量飲酒は1000~2000ミリ・シーベルトの被曝に当たります。運動不足とか、肥満、高塩分は、200~500ミリ・シーベルトの被曝に当たる。野菜不足も、100~200ミリ・シーベルトの被曝に当たるということです。現在の食品中の微量の放射性物質を制限することよりも、バランスの良い食事など生活習慣の悪いところがあれば、それを直すことにより、健康リスクを下げる方が、効果が大きいといえます。

 明治生まれの物理学者であり随筆家でもある寺田寅彦は「物事を正当に怖がることはなかなか難しい」と言っています。リスクは、怖がり過ぎるのも、怖がらないのも良くありません。放射線についても、正しく理解し対応していただきたいと思います。(続く)

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