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住職、作家・玄侑宗久さんインタビュー全文(下)心を供養、宗教者の出番

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 ――放射線は、被災者の心にどのような影響を及ぼしていますか。

 「放射線のために、何とも言えない憂うつさがありますね。見えない敵なので、自分の感覚が全くあてにできないのです。食物は、放射線が強くても味は変わらないので、食べればうまいわけですよ。うまいのに体に悪いというのは、人生であまり遭遇しない体験で、とてもショッキングです」

 ――後手に回る政府や東京電力の対応も、被災者の心的ストレスになっているのではないでしょうか。

 「よからぬ事があった時、誰かのせいにし続けていては楽になりません。『誰のせいでもない。天命だ』と思った瞬間、心は自由になる、と中国古代の思想家荘子(そうし)が教えています」

 「地震のような自然災害は、誰かのせいにし続けるわけにもいかず、心の切り替えはしやすい。しかし、今回の原発事故や政府の情報隠しはまさに人災で、これを天命と考えるのは至難の業です。政府の誤った対応が、被災者の心をさいなんでいるのです」

 「何よりもまず、政府の誠実な対応が必要です。もしまた、福島や他の原発で大爆発があった時、どのように情報を知らせるのか。今回の不適切な対応をきちんと検証し、今後の情報提供のあり方を早急に示さなければなりません」

 ――被災者が心に受けた衝撃を軽くするには、宗教の役割も重要ではないでしょうか。

 「人間は、子どもから大人に成長するにつれて、心を頭で理解できるようになります。しかし、今回のような被災体験をすると、心を頭で捉えきれなくなってしまう。これまで使っていた『苦しい』『悲しい』などの言葉だけでは、心の実情を写し出せないのです。それが心の闇になり、トラウマに変わる」

 「そのような時、心に直接語りかける宗教的儀式が、よい影響を与えることがあります。仏教の葬儀などの儀式の後、『なんだか分からないけどすっきりした』と感じたことがある人は多いでしょう。宗教的儀式には、心を供養する、落ち着かせる、という働きがある。今だからこそ、宗教者の出番は多いと思います」

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