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基調講演(3)自然界の放射線…国際医療福祉大学教授・鈴木元さん

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 ここからは、福島に関連した話をします。放射性セシウムに関しては、セシウム134、セシウム137は、ほぼ50%ずつ環境中に放出されました。それぞれの半減期が2年、30年と長いために、環境中に長くとどまります。ただ、雨、風により、セシウムが表土から流れ出ていっていますので、実際の環境中から半減する期間というのは、30年よりはもっと短くなることがわかっています。

 セシウムは体に入ると、カリウムと同じような動きをします。消化管から吸収され、細胞に取り込まれ、その後、代謝によって排せつされていく。主に、尿中に90%ぐらい、排せつされていき、大人の場合、約100日で半分が排せつされます。子供は、もっと早くて、2週から3週ぐらいで、半分が排せつされていくということがわかっています。

 食品中の放射性セシウムについては、現在、飲料水、乳製品、野菜、穀類、肉類の5群に分けて、暫定規制値が設けられています。各群の食品を、平均的なメニューで1年間食べ続けた場合に、各群から最大でも1ミリ・シーベルト、5群を合わせて5ミリ・シーベルト以下の被曝(ひばく)におさまるレベルとして、これらの値が設定されています。5ミリ・シーベルトの被曝というのは、原爆被爆者のデータでいいますと、10歳の男児ががんで亡くなるリスクが、生涯で最大0.1%上がる、要するに30%が30.1%に上がるというレベルです。

 食品中には、実は放射性物質が含まれています。もともと自然界に存在するK―40という放射性カリウムです。カリウムの0.011%ぐらいがこの放射性カリウムです。カリウムをいっぱい含むような食品には、放射性カリウムも必ず含まれています。キログラム当たりで、魚で100ベクレル、牛肉も同じです。牛乳は50ベクレル、野菜類は一般に高いですし、干しシイタケは700ベクレル、干しコンブは2000ベクレルです。バナナも比較的高くて300ベクレルあります。

 食品の今の暫定規制レベルは、自然界のK―40よりは高い値に設定されていますが、実際に今、流通している食品の放射性セシウムの量は放射性カリウムよりも低い場合が多いのです。私たちは、大体4000ベクレルくらいの放射性カリウムを体内に常に蓄積して、日常的に内部被曝をしているということも知っておいてください。

 ほかに私たちは、自然放射線をどのくらい被曝しているのかというと、宇宙線とか、土中などに含まれる放射性物質のラドンとか、あるいは、今お話しした放射性カリウムなどで、世界平均では年に2.4ミリ・シーベルトぐらいは常に被曝しています。日本は、ラドンの放射線量が低く、自然放射線全体で年に1.5ミリ・シーベルトぐらいと言われています。ラドンは、日本は非常に低いんですが、アメリカは年に2ミリ・シーベルトと報告されています。北欧では、年に3ミリ・シーベルト、場所によっては10ミリ・シーベルトになるところもあります。

 こういう見方をしていくと、年間1ミリ・シーベルト増えた、増えないというのは、実は国による自然放射線量の違いにおさまるくらいの差になることを、理解してください。

 きょうの私の講演のキーワードは、「リスクの認知と受容」です。年間5ミリ・シーベルトの被曝による健康への影響は、10歳の子供が生涯にがんで死亡するリスクが最大で0.1%上昇するといった大きさです。国際放射線防護委員会(ICRP)は、低線量の遷延被曝の場合、リスクは半分になると言っていますので、0.05%ということになります。そうしますと、生涯がん死亡リスクは、10歳の男の子で、30%が30.05%になる、それくらいのリスクの上昇なのです。

 これに対して、喫煙、飲酒、肥満など、生活習慣によって、がんになる危険が高まることも知られています。年間5ミリ・シーベルトの危険を恐れて、子供たちが外で運動をしない、家の中に閉じこもる、野菜も食べないというふうにしていくと、肥満によるリスクが上がってくるわけです。

 私たちは、一つのリスクを避けようとしたときに、知らないうちに、また別のリスクを持ち込んでしまうということを常に考えて、全体的なリスクのバランスを考えながら、行動することが大切だと言えます。(続く)

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