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医療ルネサンス小山フォーラム 放射線と健康

イベント・フォーラム

基調講演(1)健康への影響のとらえ方…国際医療福祉大学教授・鈴木元さん

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 放射線と健康をテーマにした「医療ルネサンス小山フォーラム」が10月14日、栃木県小山市の白鴎大学東キャンパス白鴎ホールで開かれ、約270人が参加しました。国際医療福祉大学教授の鈴木元さんが「放射線の影響――暮らしを守る基礎知識」と題して基調講演。放射線医学総合研究所プログラムリーダーの米原英典さんが「被曝(ひばく)を減らす日常生活の工夫」をテーマに講演しました。この後、両氏が対談し、食品の安全性などについて意見を交わしました。

 フォーラムの詳しい内容をご紹介します。最初は、鈴木さんの基調講演です。

鈴木元(すずき・げん)
 1948年岩手県生まれ。75年東京大学医学部卒業。アメリカ国立衛生研究所に留学、放射線医学総合研究所室長、放射線影響研究所主席研究員、国立保健医療科学院生活環境部長などを経て、2009年から国際医療福祉大学教授。11年から、国際医療福祉大学クリニック院長も務める。
 専門は、免疫学、放射線病理学、放射線疫学。原子力安全委員会防災専門部会ワーキンググループメンバー。1999年に茨城県東海村で起きたJCO臨界事故では、主治医として被曝した患者の治療にあたった。

 放射線が健康に及ぼす影響のリスク(危険性)の大きさを判断する基礎になっているのは、広島と長崎の被爆者のデータで、世界的な放射線防護の基礎になっています。

 原爆というのは、1秒以内にほとんどすべての被曝を起こすような、瞬間的なものでした。これに対して、福島第一原発の事故のように、環境中にばらまかれた放射性降下物からの被曝は、ゆっくりとした被曝で、専門的には「遷延被曝」と言います。リスクは、遷延被曝のほうが小さくなると考えられ、被爆者のデータを使うことは、安全性に余裕を持たせたリスクのとらえ方だと言えます。

 原爆が落ちてから、5年以内に増えたのは、急性リンパ性白血病や慢性骨髄性白血病です。これらは、20年ぐらいかけて減ってきて、現在は全く過剰に発症していないことがわかっています。それに対して、急性骨髄性白血病は、やや遅れてピークを迎え、今でも老人性の白血病という形で、過剰発生が見られます。

 肺がんや消化器がんなどの固形がんは、被爆後15年頃から少し増え始め、現在も続いています。被曝線量とがんのリスクについて、放射線影響研究所(広島市)は、被爆者の調査から、次のような数字を示しています。日本人男性ががんで死亡する確率は30%ですが、10歳の男の子が100ミリ・シーベルトの急性被曝をしたとすると、30%だった生涯のがん死亡確率が32.1%、プラス2.1%になります。女の子ですと、20%だったのが22.2%になります。被曝量が10ミリ・シーベルトですと、その10分の1で、男の子は30%が30.2%、女の子は20%が20.2%になります。

 30歳の男性ですと、100ミリ・シーベルトの急性被曝をした時の、がんによる死亡リスクの増加は1%、50歳の男性だと0.3%の増加と、増加率は小さくなります。50歳の男性と10歳の男の子を比べると、7倍ぐらいの差になります。子供のほうがリスクが高いという評価になります。

 ここまでは急性被曝によるリスクですが、遷延被曝の場合、どういうリスクが考えられるかを、次に説明します。

 まず、リスクを考えていくとき、どんなに小さい線量になっても、線量に応じてリスクは残るという考え方を国際社会はとっています。ある線量以下ではリスクはゼロになるという考え方、あるいは、低い線量では、むしろ、がんは抑制されるというような考え方もあります。いずれが正しいのか、まだ学問的にははっきりしませんが、私は安全側に立ち、線量に応じてリスクは残るという考え方で、きょうのお話をしていきたいと思います。

 実際には、遷延被曝は、急性被曝よりリスクが小さくなることを示す動物実験のデータが幾つかあります。人ではどうなるかですが、遷延被曝のケースであるチェルノブイリ原発事故では、最初の1~2週間に、放射性ヨウ素による甲状腺の内部被曝がかなり起きています。それに伴って、小児甲状腺がんは増加しました。ただ、そのほかの悪性腫瘍に関しては、まだ増えているかどうかがわからないレベルで、明らかに統計的に増えているという段階には達していません。事故からまだ25年程度ですので、もうちょっと見ていかないと、最終的な結論は出ないと思います。

 インドのケララ地方は、モナザイトという岩石から放射線が出ていまして、非常に高いガンマ線を被曝する地区があります。年間、平均4ミリ・シーベルトぐらいで、多い人では、1年間に70ミリ・シーベルトぐらい被曝します。この人たちの疫学調査が、現在、進められていますが、10年目の途中経過が報告され始めたところです。今の段階では、がんリスクの上昇は認められていません。ただし、まだ10年ですから、結論を出すには調査期間が短いと言えます。

 集団は小さいのですが、旧ソ連邦のテチャ川流域に、核施設から放射性物質が垂れ流しされて、被曝した住民が約3万人います。この3万人の調査は、もう50年たっていますが、この人たちの発がんとか白血病のパターンを見ていきますと、200ミリ・シーベルト以下ではリスクが小さくて、250ミリ・シーベルトを超したあたりで、ぐーっと増えてくるリスクの増加パターンを示しています。

 これも、被曝線量が小さいところでは、やはり遷延被曝のほうがリスクが小さくなるということを示していると言えます。(続く)

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