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介護・シニア
[認知症と向き合う](20)同じ話 気遣いかも
認知症は、脳が変化することで起こります。そして、脳の変化そのものが引き起こす症状を、中核症状と言います。例えばアルツハイマー型認知症。脳の記憶に関係する部分が変化するため、記憶力の低下が中核症状の一つとして知られています。症状はやむことなく進行し、予防したり治したりすることはできません。
「同じ事を何度も言う」ことが中核症状の例に挙げられる事があります。でも、私は「そんなに簡単に言い切っていいのかな」と思うことがあります。
ある家族の話です。
ご自宅に訪問して診療している私に、認知症のある女性が「今度はいつ来るのか」と聞いてきました。私は「2週間後」と答えました。その1分後、また同じ質問をしてきます。これを3、4度繰り返しました。
そばにいた息子さんは、「いいかげんにしなさい!同じこと何度も聞くんじゃないよっ」と怒りました。
母親は、記憶力の低下で、同じ話を繰り返したとも見えます。しかし、こうは考えられないでしょうか。
この母親は、黙って診察をしている私との雰囲気を悪くしないように、「なにかを聞こう」という衝動に駆られた、と。その原因は私に対する気遣いや不安です。ただ、母親は記憶力の低下で、同じ内容を繰り返してしまったのではないか。
そうであれば、この時に母親が見せた配慮は、人としての尊厳を感じさせるものだと言えます。もし、同じ話を繰り返したことを、脳の変化による中核症状にすぎないと見ていたら、母親の本当の姿を見失っていたかもしれません。
認知症になっても、その人の心はあたりまえのように生きています。中核症状と決めつける時は、大切なことを見逃す瞬間かもしれないのです。(木之下徹、「こだまクリニック」院長)
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