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「生活保護」座談会詳報(2)就労支援をどうするか

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岡部卓氏 首都大学東京都市教養学部教授。専門は社会福祉学。貧困・低所得問題とその対応策を研究。編著に「貧困問題とソーシャルワーク」など

 道中 生活保護を扱う福祉事務所は、福祉の対象として、働けない非稼働世帯を中心に動いてきた。このため、稼働年齢層への支援体制はまだまだ弱い。生活保護世帯分類では、稼働世帯は「その他」に入るが、17%を占め、さらに増加が見込まれる。

 今後は、福祉事務所の実施体制も見直さなくてはならない。もちろん、福祉事務所のケースワーカーは、就労支援に力を入れてきたが、実際には個人の資質や熱意に左右されるレベルだ。組織として対応するようになっていない。こうした点も見直さないと効果が上がらない。

 とはいえ、ケースワーカーと福祉事務所だけで、就労支援を成功させるのは難しい。本体の労働行政で、職業訓練に取り組むなど、他の機関の支援も必要だ。

 最低賃金については、この5年ほど、罰則が強化され、違反にも厳しい指導がなされるようになってきた。この10月に改定があり、生活保護の水準を下回るのは、3県だけになった。賃金コストが高くなると、企業の競争力がなくなると言った理由で、最低賃金の引き上げを懸念する声もあったが、実際には、意外にすんなりと引き上げが実現した。

 しかし、この10月の改定は、これまでに比べて、伸び率が落ち、均衡状態に入った印象を受ける。これをどのように評価するのかだ。

 阿部 私が強調したいのは、雇用の創出だ。それと、雇用の中味の問題だ。今は、普通の人でも正規雇用で働くのは大変な時代になってしまった。生活保護受給者は心理面や家族に問題を抱えているケースが多く、いきなり「企業戦士のように24時間働いて」と求めても厳しい。やはり、労働市場の開拓が必要で、もう少し労働者にも優しい働き方、柔軟な働き方を選べるようにならないと、結局のところ、いったん就労してもまた失職する、が繰り返されてしまう。

 ――取材した記者からも、心の問題を含め、就労現場に適応できない人が目立つという声があった。では、労働市場の改革はどのように進めたら良いのか。

 岡部 阿部さんが言われた、優しい働き方ですが、釧路市の取り組みを紹介したい。釧路市では、市がNPOや事業所の協力を得て、生活保護受給者にボランティアや就業体験をしてもらい、自立を促す事業をしている。一般労働市場で、企業戦士のように働くのも選択肢の一つだが、なかなか労働市場の要請するスキルだとか知識だとかに答えるのは難しい。

 病気や障害などがある受給者の場合、「半福祉半就労」といった中間的就労も選択肢にするべきだ。賃金が伴わないボランティアなどの社会参加を広い意味での就労ととらえて、評価する仕組みがほしい。

 阿部 そういう「半福祉半就労」とともに、私は一般労働市場も改革していかなければならないと思う。これは生活保護だけの問題ではない。日本はこれから、将来的に労働力が減っていくのは目に見えていることなので、経済界としても真剣に取り組むべき課題のはずだ。

 例えば、女性が働きやすい職場を作ること。女性の多くは、家族のケアもあり、男性と同じように夜遅くまで働くような働き方は求めていない。本当は、男性もそうだろう。子どもの寝顔しか見ることができない働き方でしか、まともな収入が得られないような状況では、日本はどうしようもない国になるのでは。

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