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医療部発

コラム

足を骨折して見えてきたこと

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 すでに3か月が経過しましたが、8月半ばに自宅で階段を踏み外して転倒し、右足の小指を骨折してしまいました。残暑が厳しいなか、慣れない松葉づえを頼りに汗だくになりながら通勤する日々が続きましたが、それから2か月たった10月中旬にようやく、自分の足だけで歩けるようになりました。

 けがをしたのは、足の甲の部分にあたる「中足骨(ちゅうそくこつ)」と呼ばれる部位。歩行には松葉づえが必要となり、通勤にかかる時間は倍増しました。酷暑のなか、やっとの思いで会社にたどり着くと、汗でベッショリとなった下着を着替えるのが日課となっていました。普段使い慣れない筋肉が悲鳴をあげ、始めの1週間ほどは両腕の鎖骨付近の筋肉痛にひどく悩まされました。せっかちな性格なため、けがをする前は、「歩くのが速すぎる」と家族に注文をつけられるのが常でしたが、自由に歩くことができない生活を余儀なくされると、日頃は気に留めなかった様々な「試練」に直面し、様々なことを考えさせられました。

日常生活で様々な「試練」

 第一の試練は、通勤ラッシュ時の駅構内の混雑です。足元の障害物に注意を払いながら、両脇に松葉づえを抱えておぼつかない足取りで改札口に向かうと、前方からおびただしい人の波が押し寄せてきます。けがをした足を踏まれてしまったり、ぶつかってしまったりするのではないかと、不安は尽きませんでした。

 さらに、会社の最寄り駅の出入り口はエスカレーターもエレベーターもなく、すれ違うのもやっとといえるぐらいの狭い階段を上り下りせざるを得ない状態。周りの人に迷惑をかけているのだろうと思うと、いたたまれない思いでした。赤面を禁じ得ないのですが、けがをする前は、手すりにつかまりながら階段を上り下りするお年寄りや負傷者を目にすると、勝手にいらだちを募らせる時もありました。いざ逆の立場に身を置くと、いかに視野が狭かったかと、ただただ恥じ入るばかりです。

 ようやく駅を出ても試練は続きます。携帯電話にくぎ付けになって、まともに前を見ていない歩行者が思いのほか多いことに驚きます。こちらが気をつけないと、接触しかねないので、いつも以上に注意を払わなければなりません。猛スピードで歩道を駆け抜ける自転車も本当に怖い。せめて歩行者がそばにいる時は減速したり、少し離れた所を走ったりしてもらいたいと強く思いました。左右に傾いている歩道などは、両手に抱えている松葉杖でバランスをとるのに、ひどく苦労しました。雨の日は、ぬれた路面に松葉づえを着地させると滑りそうになることも度々あるなど、気の休まる時はありませんでした。

 買い物をするのも一苦労です。両手が松葉づえでふさがっているため、つえを握る手首に買い物かごをぶら下げます。そして、かごの中にお茶のペットボトルを入れるのですが、かごがどうしても傾いてしまい、不安定な位置で揺れる弾みで商品を床に落としてしまうこともしばしばありました。このように日常の何気ない一つ一つの動作も、これほど足の一部分に支えられていることに改めて気付きます。帰宅時には、精も根も尽き果てた感覚になり、ぐったりしていました。

階段駆け下りる人見ると、肝冷やす…かつての自分を見るよう

 そんな日々から解放されて1か月が経過しましたが、今は右足のむくみと、ズキズキとした痛みに悩まされています。不思議なことに、むくみと痛みがあるのは、患部ではなく、親指の付け根付近なのです。けがをした部分に体重をかけてはなるまいと無意識のうちにかばい、親指に負担を強いてしまったからでしょうか。

 主治医に、「いつから走れるようになりますか」と尋ねると、「ジョギング程度なら来月からオーケーです。でも、ダッシュはダメです」とくぎを刺されました。12月の初めには、通院も終わりますが、これほど長期間にわたり、不自由を強いられることになるとは思いませんでした。今では、電車に駆け込もうと、勢いよく階段を駆け下りる人を見ると、肝を冷やします。かつての自分の姿を見るようです。今は焦らずに済むように、外出時には余裕を持って出かけるように心がけています。

 
 

 

野村昌玄(のむら・まさはる) 2010年から医療情報部。主な取材分野は、糖尿病、胃がんなど。趣味は、地酒漁りと豚カツ屋めぐり

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医療部発12最終300-300

読売新聞東京本社編集局 医療部

1997年に、医療分野を専門に取材する部署としてスタート。2013年4月に部の名称が「医療情報部」から「医療部」に変りました。長期連載「医療ルネサンス」の反響などについて、医療部の記者が交替で執筆します。

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1件 のコメント

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妹の骨折

パンダ&ベア

うちの妹も今日の1時にスキーで骨折しました。私は一緒に行かず家にいました。そして10時ごろにカップがわれました。母は、それが余丁かもしれないと言...

うちの妹も今日の1時にスキーで骨折しました。
私は一緒に行かず家にいました。そして10時ごろにカップがわれました。
母は、それが余丁かもしれないと言っていました。父も一緒に行きましたが、父にもんだいがあったとおもいます。
→ 父がちゃんと面倒見てくれれば妹は、骨折せずに済んだと思います。

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