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高齢者の性・ブログ

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宋美玄さんインタビュー(4)セックスレスは防ぐもの

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 ――セックスレスについては、治すものではなく、防ぐものなんだと書かれています。具体的には、気が乗らない時の断り方とか、普段からの触れ合いが大事だとか、男女であることを意識するような日常生活が大事と書かれているんですけれども、セックスレスについての相談も診療の中で多いのでしょうか。

  結構来るんですよ。「ここは離婚相談所?」と思うような、既に関係が破綻している事例が多い。「ずっとセックスレスだったのに、相手が浮気して女がいることがわかったんです、それで『何で私としないの!』と文句を言ってもう一度やることになったんですけど、相手のこういうところとこういうところと、こういうところが嫌なんですよ」って。でも、それって、相手のセックス云々じゃなくて、人間として嫌いなだけやん、というような。ピンポイントで見るとセックスレスなんだけど、俯瞰して見ると、もうこの2人終わっているということもいっぱいあって、難しいんですよ。

 ――結局はコミュニケーションの問題が重なってということなんですか。

  一番多いのは、最初にどちらかが、明確に拒絶したということがどこかにあるパターン。産後だったりね。男って1回断られたら誘えないみたい。それで何年もたってしまった、ということがよくあるんですけど、やはりどちらかが断ってセックスレスになったなら、断った方から誘え、というのは結構よく効きますね。

 ――私の中高年向けのブログでも、セックスレスになって長くて、もうパートナーとのセックスは無理だから、セックスは外注、不倫とか婚外恋愛という人が多いです。相手に求めるのは無理だから、外へというのはどう思いますか?

  そういうのはすごく嫌いなのですが、否定しても今の実態に合わない。だから、そういう関係がこの世にあることは認めているんですけれど、でも不倫していても、その愛人がずっとついてきてくれるわけじゃないと思います。そうなると、結局またどこかで淋しい思いをせざるを得ない。それよりはライフパートナーと、長い付き合いの信頼関係だからこそできるマニアックなセックスだったり、気を張らずにできるセックスだったり、マイペースなセックスだったりをするほうが、人生トータルで見たらいいと思うんですよね。

 ――結構私のブログに来ている人は、70、80で、奥さんとできないから、このまま死ぬのはつらいと。外に女の人をという人多いんですよ。

  すごい甲斐性のある人ですね。

高齢のセックスでも、望まぬ妊娠と性感染症には注意を

 ――例えばそういう人に倫理的にどうかという話は別として、産婦人科医として、こういうことは気を付けた方がいいという最低限のアドバイスは。

  相手の年齢にもよりますけど、望まぬ妊娠と性感染症には気を付けましょうということは伝えたいですね。イギリスの老人の間でHIVがものすごくはやっているらしいんですよ。高齢者で感染しても、エイズが発症する前に墓の中だから本人はいいという考え方もあるかもしれない。でも、それを若い世代に移したら、罪だと思いませんか?あなたはもう人生幕引きの準備にかかっているかもしれないけど、セックスパートナーに若い人を選ぶのだったら、性感染症とか、相手の家庭を壊すとか、そういうどうしようもないことだけはしてはいけないですよね。

 ――中高年の方でも性感染症にかかって先生のところに来る方は多いのですか。

  そうですね。めっちゃ多いですね。50代は結構普通にあります。自身の浮気も、だんなから移されてというパターンも両方あります。若い子だけの問題ではありません。

 ――診療現場で、中高年の方でもセックスしているんだなと気付くことは多いですか。

  60代、70代ぐらいになると、2、3割ぐらいだと思いますが、40代、50代は当たり前にしています。70、80代だとしていない人の方が圧倒的に多いけれど、していないと決めつけたら悪い、と思うぐらいはいますね。

 ――熟年期のセックスは、2人の関係の集大成のようなものだということを書かれています。若いころからの関係性が、中高年のセックスにも大きく関係しているのでしょうか?

  やっぱり、普段の生活でセックスの話なんて出せないような夫婦だと、だんなが好き勝手にして終わるだけで「お務めです」という人が多いですよね。

 熟年以降では、「かゆい」と言って来られる方が多いのですが、色々診察して「セックスの時痛くないですか?」って聞くと、それでそういう相談になったりするんですよね。

更年期、新たな性を組み立て治すチャンス

 ――更年期になれば、濡れにくくなったり、膣が萎縮したりということがありますよね。それが配慮されていないと感じることはありますか。

  だからある意味更年期っていうのはチャンスだと思うんですよ。それまで、30代から50代ぐらいまで、だんなの独りよがりなセックスに耐えてきたとして、更年期を迎えて、いきなり体調が変わるじゃないですか。「私の体も更年期を迎えて色々変わるから、セックスの仕方も変えて欲しい」と相手に注文をつけるいいきっかけになると思うんですよね。男性側も緩やかにではありますが変化していきますからね。男性更年期障害の場合も、自分の体の変化をパートナーに伝えて、一緒に治療やリセットをしながら、新たな性を組み立て治すチャンスだと思います。

 ――実際に更年期をきっかけに新しい関係を築きなおしたカップルもいるんですか。

  例えばローションを使い始めたとかね。今まで相手のテクニックが問題であんまり濡れていないのに挿入されていたという人が、更年期障害が、使うきっかけになってすごく快適です、とおっしゃったりとかね。まあ相手にこうしたいと言えるようになったという人は結構いますね。

 どっちかがしたいと思うのなら、互いに歩み寄るべきだと思うのですが、それにはまずやっぱり会話がいる。20年間ずっと没交渉で、「やっぱりこのまま終わるのはいやだ」と、いきなりガバっと襲われても、「は?」という感じなので。それまでに、互いに思っていることを口に出せるような関係性にしておかないと難しいですよね。

熟年期のセックス、アドバイスは?

 ――熟年期のセックスにお勧めの体位や、避けた方がいいことなどアドバイスを。

  そうですね。まず避けた方がいいのはアクロバティックな体位ですね。正常位って、男性側の心臓に一番負担がかかる体位なんです。心拍数が一番上がるらしい。だから昔と同じような激しいセックスは、本当に腹上死をするそうですから、避けた方がいい。

 私の知り合いの救急医に聞いたんです。腹上死を何例か診たけれども、全員愛人っぽい女が気まずそうについてきている。だから、愛人とのセックスに燃えて、普段しないような激しいセックスをしちゃったんだなと思ったって。

 あとは、男性の勃起力も勃起角度も低下するし、女性も濡れにくくなるので、ローションを使ったり、心臓が悪い人はだめですが、男性はシアリスやレビトラやバイアグラなどの勃起改善薬をうまく利用した方がいいと思います。

 ――精神的なアドバイスもお願いします。

  セックスというのは、性器と性器をつなげるものだと思っている人からすると、うまくたたなくなったりとか、膣が萎縮して痛いとなった時に、「僕たちはセックスができない」ということになってしまう。性器の挿入ありきではなく、全体の密着度とかスキンシップの満足感だとかを追求してみたらいかがでしょうか。男性の場合は、亀頭以外の性感帯、陰のうとか、肛門とか乳首など別の性感帯を開発しておくのもいいと思います。そういうところを女性も愛撫してあげる。挿入は、たまにできる時があったらラッキーぐらいに思って、いちゃいちゃして互いに愛情確認するのが最終目的ぐらいに思っておくと、プレッシャーがなくてもっと楽しめるかなと思います。(終わり)

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岩永直子

読売新聞 医療部記者

39歳、夫と二人暮らし

趣味は居酒屋巡りとダイエット

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4件 のコメント

ハグマットを使わずにハグ

後期高齢者

 A新聞の広告?1月31日「愛妻新聞」に、「ハグで、世界をほっこりさせよう」と載っていた。 ハグマット、男性と女性の足形が描いてあり、その上に足...

 A新聞の広告?1月31日「愛妻新聞」に、「ハグで、世界をほっこりさせよう」と載っていた。
 ハグマット、男性と女性の足形が描いてあり、その上に足を乗せて抱き合うのです。初めははすかしがるかも知れないが‥とあった。
 妻はキスが嫌い。二人とも眼鏡を掛けてキスは出来ないが‥。
 このハグマット使おうと思っていたが、家内が出かけるとき玄関でこちらを向かせハグしてみた。背中をポンポンと叩いて、「気をつけてネ。早く帰っておいで。何かあったら電話してネ」。そうだ、これからは1日何回ハグできるか、試してみようと考えた。

 これもsexの一つのスタイルだと思っている。性器と性器をつなぐことはないと思うが、ハグで十分愛し合えるはず。
 
 家内に、亀頭以外の性感帯、陰のうとか、肛門とか乳首など別の性感帯を開発して欲しいなど言えない。家内の性感帯を愛撫することも出来ない、今までの生活が多忙で、それだけの余裕がなかった。
 

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一緒に楽しむ、嘘を言わない関係=セックス

グラスブラッシュ

性に関する本もアダルトビデオも表題が目立たないと興味もなく通り過ぎられちゃいますよね。性の教育DVDのカーマスートラ、ベターセックス、Gスポット...

性に関する本もアダルトビデオも表題が目立たないと興味もなく通り過ぎられちゃいますよね。
性の教育DVDのカーマスートラ、ベターセックス、Gスポットの秘密、ガールズガイドセックス。
これらのDVDはなかなかよく出来ています。
なにより綺麗な映像です。ナレーションもしっかりしていますよ。

よくアダルトビデオでは性教育にならないという事が言われています。
数百本でいいからアダルトビデオをみているとわかる事もあります。
あの映像に出てくる方達、他のビデオにもでています。
プロだから出来るのでしょうね。
それをまねする必要はないでしょう。

先生の本もイラストをいれたり、表紙の色を工夫したり、紙質を考えたり。
女医が教える 本当に気持ちのいいセックスは購読させて戴きました。
内容もシンプル、図説入りのいい本です。
今は他の人に譲ってしまいましたけどね。

その年代や必要と思われる環境ってあると思います。
性って難しいですね。
でも楽しいという本質が隠されているのでは?
きもちよく一日を過ごせる原動力にもなる事があるので、大切なふたりだけの宝物に慌てずに育てあげていきたいものです。

パートナーに嘘をいわない、会話を楽しむ、相手を慈しむ、愛する。
ふたりでいる時、一緒という気持ちは実にいいです。
コーヒーも一緒、食事も一緒、セックスも一緒。
何でも一緒。楽しいですね。

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過激な本のタイトルとは違う人

医療関係者

自分は医療関係者なので,先生のようなマスコミに出て本を著してアピールする人はまがいもの,という先入観がありました.宋先生の出された本は,まず手に...

自分は医療関係者なので,先生のようなマスコミに出て本を著してアピールする人はまがいもの,という先入観がありました.宋先生の出された本は,まず手にとってもらえないと仕方ないとしても,興味をひくように過激なタイトルになっていて,医師の立場を利用して目立ちたいだけ?と誤解していました.

しかし,こちらでのお話も,テレビ出演された際のお話も,理性的で常識的で,医師として社会に伝えるべきことを過不足なく表現されており,非常に好感を持ちました.
先生の活動がコマーシャリズムや悪意にゆがめられないことを祈っています.

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